EV向け需要拡大で大増産
豪州でリチウムの増産が加速している。リチウムは主に電気自動車(EV)やスマートホンなどのリチウムイオン二次電池の原料として使用される。本格的なEV時代の到来を見据え、自動車や電池の大手メーカーが豪州のリチウム資源に触手を伸ばしている。
西オーストラリア(WA)州の豪資源企業、ライオンタウン・リゾーシーズは5月から6月にかけて、電池大手の韓国LGエナジーソリューション、電気自動車(EV)世界最大手の米テスラ、自動車大手の米フォード・モーターと相次いでリチウムの長期供給契約を締結した。リチウム専業の豪ピルバラミネラルズなどの新規開発事業も次々と立ち上がっている。
世界のEV販売台数は1年で倍増
豪連邦産業・科学・エネルギー・資源省の資源エネルギー報告書(2022年3月四半期)によると、21年の世界のEV販売台数は約650万台と前年の約320万台から倍増した。このまま普及が進めば、30年にはEVは世界の自動車販売台数の約40%を占める見通しだという。
また、21年には世界のリチウム需要の75%がリチウムイオン電池向けだったが、EVの普及が進むと見られる27年には90%に達すると見られている。
豪リチウム輸出額は6年後6.7倍に
同報告書によると、20/21年度に22万4,000トンあった輸出量(炭酸リチウム換算)は26/27年度には69万2,000トンと3倍以上に増える見通しだ。
増産と世界的なリチウム市況の上昇を背景に、輸出額は20/21年度の10億豪ドルから26/27年度には67億豪ドル(物価変動を加味した実質値)まで伸びると予測されている。
リチウム(元素記号Li)は原子番号3の元素。生産は豪州やチリ、中国、アルゼンチンに集中している。チリ、アルゼンチンは塩湖の水分を蒸発させて抽出する。一方、豪州は鉱床から採掘した鉱石の大半を輸出し、主に海外で精製している。
豪生産量は世界1位、埋蔵量も2位
米国地質調査所(USGS)によると、21年の豪州産リチウムの生産量(リシア鉱石換算)は5万5,000トンと世界1位で2位チリの2倍以上。確認されている資源量も570万トンとチリ(920万トン)に次いで2番目に多い。
ただ、価格変動の激しさは、生産や投資を行う企業にとって不安材料と言える。足元では炭酸リチウムの国際価格は高騰しているが、18年から20年にかけては需給バランスが崩れて暴落する局面があった。資源は偏在しているものの、特に珍しい金属というわけではない。探鉱によって各国の資源量は年々増加している。
また、リチウムの精製からリチウムイオン電池の製造、EVの生産までのサプライチェーン全体で、環境負荷の低減を図る必要がある。リチウム精製の工程では、有害物質が発生するほか、膨大なエネルギーも消費するからだ。
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