物価を抑制しつつ景気後退を回避することは本当に可能なの?
中央銀行の豪準備銀(RBA)が5日、政策金利を2会合連続で0.5ポイント引き上げた。平時は0.25ポイント刻みで金利操作を行うが、0.5ポイントの利上げ自体が異例。5月に12年ぶりに利上げ(0.25ポイント)に踏み切って以来、利上げは3会合連続となった。
これほど急速なペースで利上げを行うのは、1994年の10月と12月(11月は据え置き)にそれぞれ1.0ポイント引き上げた局面以来、約28年ぶり。加速するインフレに対するRBAの危機感を反映したものと言える。
通貨の安定を図るRBAとしては、世界的な利上げの動きに追従せざるを得ない側面もある。米連邦準備制度理事会(FRB)が6月に政策金利の誘導目標を0.75ポイント引き上げて1.5〜1.75%とするなど、日本を除く主要国の中銀は金融引き締めを急いでいる。
マネーは金利の高い通貨に流れる。主要国の金融引き締めが加速する現在の局面で利上げが遅れれば、内外金利差の拡大で豪ドルの急な下落を招き、それはそれで経済に悪影響を与えかねない。
とはいえ、急な利上げは、諸刃の剣でもある。企業の設備投資や個人消費を抑制して景気を冷え込ませる可能性がある。市場参加者からは、インフレとリセッション(景気後退=2期連続のマイナス成長)が同時進行する「スタグフレーション」を懸念する声も出ている。
RBAはスピーディーな利上げで急なインフレを抑制しつつも、景気後退も回避するという、難しい舵取りが本当にできるのか。景気の「ソフトランディング」(軟着陸)に向けて真価が問われている。
「金融引き締めは長く続かない」
ロウRBA総裁はこれまで、今年12月四半期までに消費者物価指数(CPI=直近3月四半期に前年同期比5.1%上昇)が7%前後でピークアウトするとの筋書きを描いてきた。だが、一部のエコノミストは懐疑的だ。
公共放送ABC(電子版)によると、金融情報サービス会社「キャピタル・エコノミクス」のシーリアント氏は「6月四半期のCPIは再び力強い数字になると見ている。RBAは8月に再び0.5ポイントの利上げを行うだろう」と指摘。「インフレは8%まで上昇し、RBAは(今回の引き締め局面で)政策金利を最高3.5%まで引き上げる」との観測を示している。
だが、住宅価格の急落などを背景に景気が落ち込んだ場合、金融引き締めは短命に終わる可能性があるという。不動産情報サービス会社「コアロジック」の6月の住宅価格指数は、シドニーで2.8%、メルボルンで1.8%、それぞれ前期比で下落している。
「金融政策の引き締めが長く続くとは予想していない。(利上げの影響で)私たちは、住宅価格が4月のピークから15%下落すると予測している。そうなれば、豪州の現代史の中で最大級の下げ幅になる」(同氏)
米金利と6月四半期の豪CPIが焦点に
一方、市場は0.5ポイントの利上げを想定しており、サプライズはなかった。シドニーの豪証券取引所(ASX)の代表的な株価指数「S&P/ASX200」は5日、前日終値比16.70ポイント安(0.25%下落)の6,629.30で引けた。
外国為替市場の豪ドル相場は6日午後7時時点で、1豪ドル=68米セント前後と前日より1米セント(約1%)低い水準で推移している。
今後の焦点は、FRBが7月26〜27日に開く次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で発表する金利政策と、豪統計局(ABS)が27日に発表する6月四半期のCPIだ。RBAはこれらを判断して、8月2日の次回会合で金融政策を決定する。
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