アボット元首相:「日豪と世界の民主主義にとって恐ろしい喪失」
奈良市内で応援演説中の8日午前に銃で撃たれ、同日午後に死去した安倍晋三元首相に対し、アンソニー・アルバニージー首相や豪州の首相経験者が一斉に追悼の意を表明した。
アルバニージー首相は声明で「安倍氏の夫人と家族、友人、日本国民に最大限の追悼の意を表明する」と述べた。その上で首相は「安倍氏は世界の舞台における豪州の最も親密な友人だった。2014年に豪日の2国間関係を特別な戦略パートナーシップに引き上げた。彼の指導力の下で、日本は豪州にとってアジアで屈指の友好国となり、その遺産は今日も引き継がれている」と安倍氏の功績を称えた。
在任中に安倍氏と交流があったスコット・モリソン前首相は、フェイスブックの投稿で「安倍氏は豪州にとって偉大な友人であり、戦後の世界で最も重要な指導者の1人だった。安倍氏が襲われたという報道に胸を痛めている」と語った。
15年から18年に連邦首相を務めたマルコム・ターンブル氏は、ツイッターの投稿で「日本は現代史で最も重要な指導者を失った。安倍氏が銃弾に倒れても、彼が日本と地域に残した功績は息づいていく。昭恵夫人と日本国民に最大限の追悼を表明したい」と述べた。
14年の安倍首相(当時)訪豪時に親交を深めたトニー・アボット元首相は、ツイッターで「豪州は偉大な友人を亡くし、日本は戦後最も重大な指導者を失った。安倍氏の下で日本は、西太平洋地域において民主主義を主導する地位を築いた」と投稿。「安倍氏は『クアッド』(日米豪印の経済・安保の枠組み)の父で、台湾の友人であり、自由主義の価値観の守護者でもあった。日本と豪州、世界の民主主義にとって恐ろしい喪失だ」と述べた。
06〜07年と12〜20年の安倍氏の首相在任中、豪州ではジョン・ハワード氏、ケビン・ラッド氏、ジュリア・ギラード氏、トニー・アボット氏、マルコム・ターンブル氏、スコット・モリソン氏の6人が連邦首相を務めた。安倍氏はこれらの連邦首相とともに、従来から緊密だった日豪の経済関係に加え、安全保障面での連携強化も進めた。
豪州の主要メディアも安倍氏の死去を速報で報じた。
公共放送ABC外信部のジョン・ライオン編集委員は、長期政権を築いた安倍氏について「日本の回転ドア政治(首相が毎年のように入れ替わる様子)を終わらせた」とした上で、◇連邦議会で演説を行った最初の日本の指導者だったこと、◇旧日本軍によるダーウィン空爆の追悼式典に出席したこと、◇これまでの豪州の首相と交流を深めたこと、◇「クアッド」の創設に尽力したこと、などを指摘した。
非営利の豪独立系メディア「カンバセーション」は8日、「日本では銃による暴力事件は非常に珍しい。日本国民は深い衝撃を受けている」と指摘した。その上で安倍氏の功績として、◇クアッドの創設を発案したこと、◇長い首相在任期間において最も経験が豊富な指導者の1人となったこと、◇「ゴルフ外交」を通して米国のトランプ前大統領と親交を深め、日米同盟の強化に尽力したこと、などを挙げた。