政府系シンクタンクが報告書発表
中国政府は核軍拡や海洋進出を自ら加速させる一方で、実質的な「中国包囲網」であるAUKUS(米英豪の軍事協力の枠組み)に強い危機感を抱いている。中国政府系のシンクタンクは20日、豪州が米国、英国と共同開発して国内に配備する原子力潜水艦に関する報告書を発表し、同原潜開発計画は「危険な前例」となり、核兵器の非拡散に重大な危険をもたらすと警告した。21日付の公共放送ABC(電子版)が伝えた。
これによると「中国軍控与裁軍協会」と「中国原子力産業戦略研究所」の2つのシンクタンクは、北京で国営メディアを集めた記者会見を開き、「危険な陰謀:AUKUSの下での原子力潜水艦共同開発による核非拡散のリスク」と題した報告書を発表した。
同報告書は、AUKUSによる米英豪の原潜共同開発について、核保有国が非核保有国に対して兵器品質の核物質を移転させる初のケースとなるため「危険な前例になる」と断じた。その上で報告書は「原子力の安全保障、原潜や核ミサイル技術の拡散などの軍拡競争を含む様々な側面でリスクを煽る可能性があり、世界の軍事バランスや安定に対して重大なマイナスの影響を与える」と警鐘を鳴らした。
豪シンクタンク「ローウィー研究所」のリチャード・マクレガー氏はABCに対し「(2つのシンクタンクは独立した機関ではなく)中国共産党の独裁体制の一部」であることから、報告書は中国政府によるAUKUSへのネガティブ・キャンペーンの一環だとの見方を示した。
また、同氏は「(中国は)いかなる手段を使ってでも、AUKUSを妨害してくるだろう。私たちは、これが今後10年は続くと覚悟しなければならない。中国は諦めないだろう」と解説している。
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