グレート・バリア・リーフで海洋汚染の懸念
タニヤ・プリバーセック連邦環境・水資源相は4日、クイーンズランド(QLD)で申請されていた石炭開発の新規事業計画を却下した。連邦環境相が石炭開発計画を退けたのは史上初めて。公共放送ABC(電子版)が伝えた。
炭鉱は、世界最大のサンゴ礁群とされる世界遺産のグレート・バリア・リーフから10キロ離れたQLD州ロックハンプトンにある。事業主体は、富豪で保守系政治家のクライブ・パーマー氏の関連企業であるセントラル・クイーンズランド・コールだった。
同環境相は「現時点で得られる情報から、私はこの石炭開発事業がグレート・バリア・リーフに対して容認できない影響を与えかねないと考える」と述べ、海洋汚染を引き起こす可能性があることを却下の理由に挙げた。炭鉱開発が地域の水資源に与えるマイナスの影響も懸念されるという。
10日間のパブリック・コメント(意見募集)を経て最終決定が下されるが、環境相の却下が覆される可能性は低いと見られている。
背景に環境保護派の台頭
世界的な温室効果ガス削減の流れを受け、化石燃料の輸出大国である豪州でも、石炭や天然ガスの開発計画を見直す動きが出ている。
この日は、2030年までに温室効果ガスを48%削減(05年比)することを明記した労働党政権の気候変動対策法案が、与党やグリーンズ(緑の党)の賛成多数で連邦下院を通過している。2大政党がいずれも過半数に満たない連邦上院では、先の選挙で12議席と勢力を倍増させたグリーンズが法案通過のキャスティングボートを握っている。
グリーンズは「75%削減」と労働党政権より厳しい目標を掲げるとともに、「石炭と天然ガスの新規開発の即時停止」を主張している。先の選挙では、気候変動対策の強化を訴える保守系無所属議員のグループ「ティール」も下院で10議席と一気に勢力を伸ばした。政権がQLD州の石炭開発計画を却下した背景には、これらの環境保護勢力の台頭もあると言えそうだ。
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