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モリソン前首相が窮地に立たされている理由とは?

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秘密裏に5閣僚を重複兼任 「民主主義に反する」と批判強まる

スコット・モリソン前連邦首相(Photo: Wikipedia)

 スコット・モリソン前首相(自由党)が、コロナ禍の職務遂行をめぐり、窮地に立たされている。2020年以降のパンデミック(世界的大流行)という緊急事態に対応するため、首相の権限を高めることを目的に、秘密裏に5閣僚の職務を現職閣僚と重複して兼務していたことが明るみに出たためだ。

 地元メディアの報道によると、当時の閣僚の中には、首相が兼任していることを知らされていない者もいた。アンソニー・アルバニージー現首相(労働党)は15日、首相府による調査を開始すると表明。前首相の行為は「民主主義に反する強権的な行為」だとして、現与党の労働党だけではなく、モリソン氏が所属する当時与党の自由党内からも批判が強まり、議員辞職を求める声が高まっている。

法的根拠はどうなっているの?

 現時点で明らかになっている情報によると、モリソン氏は、新型コロナの感染が拡大した20年3月14日に連邦保健相、同年3月30日に連邦予算相に、それぞれ自らを任命。グレッグ・ハント保健相(当時)は首相の重複就任を把握していたもようだが、マシアス・コーマン予算相は知らされていなかったと見られる。

 さらに、モリソン氏は21年4月15日に産業・科学・エネルギー・資源相、同年5月6日に連邦内務相と連邦財務相をそれぞれ重複して兼務。いずれもその事実を公にせず、内密に職務を遂行した。

 オーストラリアでは連邦閣僚の裁量が大きく、所管分野の変更に際しては、新たな宣誓を行う必要がないとされる。モリソン氏の一連の行為は、「行政上の手段」(administrative instrument)の範囲内とされる一方で、憲法学者からはそうした法的根拠はないとの見方も出ている。

モリソン氏は議員辞職を否定

 与野党から議員辞職を求める声が高まる中で、モリソン氏は17日の会見で、秘密裏に閣僚を重複して兼任したことは、コロナ禍に対応するために「必要だった」と述べ、引き続き連邦下院議員を続ける意向を強調した。

「(コロナ禍に際して)首相としての責任の重さを理解できたのは、私だけだった。大嵐のど真ん中で、私は船の舵を握っていたのだ」(モリソン氏)

 モリソン氏は1968年シドニー生まれの54歳。ニュー・サウス・ウェールズ大学(UNSW)卒。豪政府観光協会の代表を経て、07年選挙で連邦下院議員に初当選。移民相、財務相などを歴任した後、18年から22年まで第30代連邦首相を務めた。

 コロナ禍では、厳しい水際対策と都市封鎖、手厚い財政支援を進め、他の先進諸国と比較して感染拡大を低水準にとどめた。保守連合(自由党、国民党)の再選を目指した今年5月の選挙で敗北し、首相を辞任していた。

■ソース
Morrison doubles down on move to secretly acquire ministry powers after MPs call for him to resign(ABC News)

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