利上げで住宅ローンの支払い増も家計の重荷に
先進国の平均を上回る長年の経済成長と、住宅価格の上昇など資産価値の増大を背景に、世界でも有数の豊かさを享受してきたオーストラリア。コロナとの共生も進み、リベンジ消費で街や観光地は活気を取り戻したように見える。ところが、加速するインフレに賃金上昇が追いついていない。今後は急速な利上げによる住宅ローン金利の上昇も家計に重くのしかかり、庶民の生活は苦しくなっていきそうだ。
インフレの勢いが止まらない。豪統計局(ABS)によると、直近6月四半期の消費者物価指数(CPI)は前年同期比6.1%上昇した。2021年12月期は3.5%上昇、今年3月期は5.1%上昇だった。コロナ禍からの回復による世界的な供給網の根詰まりや人手不足に加え、ロシアによるウクライナ侵攻を背景としたエネルギーや食糧の高騰が、物価上昇に拍車をかけている。
インフレに対して、賃金の伸びは追いついていない。ABSによると、6月の賃金物価指数(WPI)は前年同期比2.6%の上昇、5月の成人平均週間収入は前年同月比1.9%の上昇にとどまっている。つまり、私たちが会社や取引先から得ている所得は、物価上昇に対して目減りしている。
平均的住宅ローンで月500豪ドル弱の支払い増に
インフレ圧力を抑えるため、中央銀行の豪準備銀(RBA)は、急ピッチで政策金利を引き上げており、今後は住宅ローンの支払いも家計に重くのしかかってくる。RBAは5月、11年ぶりの利上げに踏み切り、同金利を0.25ポイント引き上げた後、8月までに3会合連続で異例の0.5ポイントずつの引き上げを実施。同金利を1.85%まで引き上げている。今後も利上げによる金融引き締めは当面続くと見られる。
豪州で主流の金利変動型住宅ローンの金利は政策金利に連動する。だが、公共放送ABC(電子版)によると、現時点の住宅ローン金利に反映されているのは、5月の0.25ポイントの利上げのみで、年末にかけて利上げの影響がボディブローのように効いてくるという。
コモンウェルス銀オーストラリア経済調査部のギャレス・エアード部長はABCに対し「RBAは短期間に強力な金融引き締めを行っている。政策金利の変更が、金利変動型住宅ローン金利の月々の支払い額に反映されるまでには時間差がある。RBAが今後利上げを行わないと仮定したとしても、少なくとも3回分の政策金利の利上げは今後、(住宅ローン金利に)反映されるということだ」と述べた。
金利比較サイト「レイトシティ」の分析によると、貸付残高50万豪ドルで25年払いの平均的な金利変動型住宅ローンの場合、現時点の政策金利の利上げがすべて反映されれば、1カ月当たり平均で472豪ドルの支払いが増えることになるという。
金利上昇を受けて、シドニーやメルボルンなど豪大都市の住宅価格は直近で下落に転じている。物価に対して実質賃金が目減りしている上に、資産価値も下落し、住宅ローン支払いの負担も増える。豪州在住者の暮らしぶりが当面、苦しくなっていくことは間違いないようだ。
■ソース
Mortgage borrowers and renters told to brace for big financial hit by December(ABC News)