資産価値が下がり、ローン支払額も増加 インフレで実質賃金も目減り
止まらない物価上昇を抑えるため、豪準備銀は明日、政策金利を0.5ポイント引き上げて2.35%とする見通しだ。インフレや金利の動向は、私たちが働く会社の業績や普段の生活にも大きな影響を与える。金融市場の参加者や投資家だけではなく、一般の勤労者もその影響から逃れられない。
急激な利上げの副作用はすでに現れ始めている。政策金利の引き上げに伴う住宅ローン金利の上昇を背景に、コロナ禍の低金利で高騰していた住宅価格は今年に入り、下落に転じている。調査会社コアロジックによると、8月の全国の不動産価格指数は4カ月連続で前月を下回った。
政策金利が住宅ローン金利に反映されるまでには時間差がある。このため、住宅ローンを返済している人は毎月の支払い額が今後増え、家計に重くのしかかってくる。
株価も利上げの打撃を受けている。金利上昇は借り入れコストの負担増や消費マインドの減退につながり、企業の業績を悪化させる要因となるからだ。世界的な株安の流れもあり、豪証券取引所(ASX)の株価指数は8月末時点で年初から8.2%下落した。
不動産や株式などの資産価値が下がり、住宅ローンの支払いが増えるだけではなく、インフレで実質賃金も低下している。豪統計局によると、6月期の賃金物価指数(WPI)は前年同期比2.6%の上昇、5月の成人の平均週間収入は前年同月比1.9%も上昇と、物価の上昇に追いついていない。
インフレがいつ頭打ちになるのか。利上げによる景気悪化の影響を回避して、豪州経済がソフトランディング(軟着陸)を実現できるのか。見極めるには、まだ時間がかかりそうだ。