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仮想通貨の規制強化目指す

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「ステーブル・コイン」や中国「デジタル人民元」も対象に

Photo: Andre Francois on Unsplash

 オーストラリアで仮想通貨の規制を強化する動きが出ている。野党議員が次期連邦議会に議員立法を上程する意向を明らかにした。公共放送ABC(電子版)が報じた。

 仮想通貨規制法案を議会に提出するのは、野党自由党のアンドリュー・ブラッグ上院議員。仮想通貨規制の不備はオーストラリアの安全保障を脅かしかねないとして、規制強化を訴えてきた。昨年、上院の調査委員会を率い、仮想通貨取引所のライセンス制度の導入や、仮想通貨取引による利益や損失に関する課税ルールの見直しなど12の提言を発表していた。

 しかし、自由党と国民党の保守連合は5月の連邦選挙で敗北して政権を下りた。労働党の新政権の下で、規制強化の取り組みが進んでいないことから、提言の内容を盛り込んだ議員立法を提出することになった。

暴落や詐欺被害も

 法案は、法定通貨と連動した仮想通貨の一種である「ステーブル・コイン」についても、ライセンスなしでの取引を違法とする。ステーブル・コインをめぐっては、低いリスクで高い利益が得られると宣伝された「テラ」が5月に暴落するなど、投資家保護の観点から問題視されている。

 仮想通貨の投資詐欺も横行している。豪競争消費者委員会(ACCC)によると、今年1月〜5月の被害額は1億5,800万豪ドルに達し、昨年の同じ時期と比較して314%増加した。同議員は「不必要な被害から消費者を守ることが重要だ」と指摘している。

 オーストラリアの現行制度では、仮想通貨に対する規制はほとんど存在しない。仮想通貨取引業者には通常の会社法の規制が適用されるだけだ。

安全保障上の脅威に

 また、法案は中国政府が試験的な運用を始めている「デジタル人民元」の規制も対象としている。同議員は「デジタル人民元が太平洋諸国やオーストラリアに広く流通するようになれば、中国は経済的、戦略的な強大な権力を握ることになる。我々はそれに対処しなければならない」と述べた。

 中国政府はこれまで3年間、デジタル人民元の限定的な試験運用を実施してきた。14億人の市場で本格的に導入すれば、中国政府が決済システムを完全にコントロールすることになる。アラブ首長国連邦やタイなど海外でも試験運用を始めている。海外で流通が広がれば、安全保障上の脅威になるとして同議員は警鐘を鳴らしている。

 ただ、ABCによると、野党議員の議員立法である同法案が可決・成立する可能性は、今のところ低いという。労働党政権は仮想通貨について、金融商品として扱えるものは既存の法律で、金融商品として扱えないものは別の新法で、それぞれ対応するとの方針を示している。

■ソース
Liberal senator drafts cryptocurrency bill to regulate ‘stablecoins’ and China’s digital yuan(news.com.au)

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