米テスラの新車効果大きい
オーストラリアの連邦議会で、電気自動車(EV)の減税法案が近く成立する見通しとなった。遅れていたEV普及の起爆剤となるのかが注目される。
EVの普及を目指す業界団体「電気自動車協会」(EVC)によると、年初から9月まで9カ月間のEV(エンジン付きで充電ができるプラグインハイブリッド車=PHEVを含む)の新車販売台数は2万6,356台となり、前年の同じ時期と比較して65%増と急激に伸びた。
ただ、新車販売台数全体に占めるEVの割合は3.34%と、ドイツ(26%)、英国(19%)、米カリフォルニア州(13%)などのEV先進国・地域と比較すると大幅に普及が遅れている。世界平均(8.6%)も大きく下回っている。
モデル別の市場占有率(シェア)を見ると、特定の車種に人気が偏っている。米テスラのセダン「モデル3」が33%と群を抜いて1位。今年に入って販売が開始されたテスラのスポーツ多目的車(SUV)「モデルY」が20%と2位につけており、これらのテスラの2モデルだけでEV市場の53%を占めている。
今年9月までのEV販売台数が急激に伸びたのは、モデルYの新車効果が大きかったことが分かる。
消極的だった普及策 航続距離にも不安
オーストラリアでEV普及が遅れている背景には、海外の主要国のように手厚い支援策を採ってこなかったことがある。保守連合(自由党、国民党)の前政権はEV普及策に消極的で、州政府単位の小規模な施策を除くと、国全体では購入時の巨額の補助金などの普及促進策はなかった。
また、国土が広大で走行距離が長いことから、一般的に航続距離が短いEVは、消費者に敬遠される傾向もあった。特に隣町との距離が離れている農村では、現時点の航続性能ではEVの選択は現実的とは言えない。
充電インフラの整備も遅れている。今年6月末時点の公共充電ステーションの数は全国で247カ所。このうち高速充電設備を備えたステーションは356カ所にとどまっている。
EVCの政策部門の責任者を務めるジェイク・ホワイトヘッド氏は「オーストラリアの過去の政権がEV戦略で世界に遅れを取っていたため、オーストラリア市場は世界のEVメーカーに見向きされなかった。そのため、オーストラリアの消費者は少ない車種からしか選ぶことができず、納車まで数カ月から数年待たされることになった」と指摘した。
同氏は、新政権が推進するEV普及策は「良いニュースだ」と歓迎した上で、今後の優先課題として、オーストラリアでは導入されていない燃費規制を進めるべきだとの考えを示している。
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