ロックダウンの反動で前年同期比5.9%増
オーストラリア統計局(ABS)によると、9月四半期の実質国内総生産(GDP)成長率は、前期比0.6%増(季節調整値)となった。新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大によるロックダウンの影響で1.9%減となった21年9月以降、4期連続でプラス成長を維持した。ただ、6月期の0.9%増から減速し、市場予測(0.7%)を小幅に下回った。
一方、前年同期(21年9月期)比では5.9%増と高い成長を記録したが、1年前のロックダウンによるマイナス成長の反動によるところが大きい。
GDPへの寄与度が大きい個人消費は依然として好調だった。家計支出は前期比1.1%増となり、GDP成長率を0.6ポイント押し上げた。内訳を見ると、「宿泊・外食」が5.5%増、「運輸サービス」が13.9%増、「自動車購入」が10.1%増と大幅に伸びた。「宿泊・外食」は既に2期連続でコロナ禍前の水準を上回っている。
消費者はまだ財布の紐を引き締めていない
ABSの国民経済計算統計部門の責任者を務めるショーン・クリック氏は記者発表で「コロナ規制の解除に伴い、国内・海外旅行の家計支出が引き続き拡大した。世界的な供給制約が緩和されたため、自動車輸入が伸びたことから、新車購入費用も増加した」と指摘した。
賃金の動向を示す「雇用者報酬」は3.2%増と2006年12月期以来の高い伸びを示した。人手不足や歴史的に低い水準にある失業率、法定最低賃金の引き上げ、スーパーアニュエーション(確定拠出年金)の雇用主負担の増加(今年7月1日より10.0%から10.5%に引き上げ)が、雇用者報酬の増加に寄与した。
家計が収入をどれだけ貯蓄に回しているかの度合いを示す指標となる「家計貯蓄率」は6.9%と4期連続で低下し、コロナ禍前の水準をほぼ回復した。貯蓄率が低下している背景には、「高い水準の消費支出と(利上げによる)住宅ローン金利支払いの増加」(クリック氏)がある。
輸出(2.7%増)が輸入(3.9%増)を上回ったことから、貿易は全体でGDPを0.2ポイント押し下げた。輸出は農産物(9.8%増)や旅行サービス(海外からの旅行=18.6%増)などが好調だった。一方、輸入は旅行サービス(海外への旅行=58.0%増)や燃料、自動車などが大幅に伸びた。