3月に州議会選挙 自ら公表して早期の幕引き図ったか
オーストラリア東部ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州のドミニク・ペロテ州首相(州自由党党首)は12日、19年前に開いた自身の21歳誕生日の仮装パーティーで、ナチスの制服を着用していたことを明らかにし、謝罪した。
同日付の公共放送ABCによると、2日前にかかってきた1本の電話をきっかけに、州首相は公表を決断したという。電話の詳細は不明だが、事実を知る何者かが公表されることを知らせた可能性がある。州首相は政治的な打撃を最小限に抑えるため、暴露される前に事実を自ら公にしたと見られる。
州首相はシドニーで開いた会見で「私の行動を深く恥じている。州民の皆さんが感じる苦痛に真摯に謝罪したい。特にユダヤ人社会やホロコーストの生存者、退役軍人とその家族の方々には、私のひどい過ちについて深くお詫びしたい」と謝罪した。
「21歳の時と同じ人間ではない」
NSW州は3月25日に州議会選挙を控えている。州首相は、選挙への悪影響を抑えるために先手を打ったとの見方を否定した。
州首相は現在40歳。事実の公表について、これまで検討したことはあったが「決して行動はしなかった」と弁明した。ナチスの制服を着たことについては、誕生日の翌日に両親から「間違っている。無神経だ」と言われて、過ちに気づいたという。
州首相は「私は21歳の時と同じ人間ではない。熱意を持ってユダヤ人を支援している」と語り、引責辞任の可能性を否定した。
ただ、当時のペロテ氏がネオナチ思想に傾倒していたのか、単なる悪ふざけだったのかは不透明だ。
ユダヤ人社会は決断を評価
一方、地元のユダヤ人団体「NSWユダヤ人代理人協議会」のデービッド・オシップ会長は声明で、州首相が自ら謝罪したことに謝意を表明。ペロテ氏が州財務省時代にシドニー・ユダヤ人博物館への予算提供を実現するなど、ユダヤ人社会に貢献してきたことを評価した。
その上で、同会長は「ナチスの象徴的な意味を軽く捉えてはいけない。ナチスの制服を着ることは冗談ではすまされない。第2次世界大戦中に殺害された600万人のユダヤ人を含む罪のない民間人と、ナチスと戦って命を落とした数千人のオーストラリア兵士を侮辱するものだ」とコメントした。
また、ユダヤ系オーストラリア人のマイク・フリーランダー連邦下院議員(労働党)はABCに「極右勢力の中で反ユダヤ主義が台頭していることは大きな懸念だ」と述べた上で、「私には、州首相の謝罪は非常に真摯なものに聞こえた。彼は許されてもいいだろう」と語った。
■ソース
Dominic Perrottet apologises for wearing Nazi uniform to his 21st birthday(ABC News)