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空飛ぶ「リアル・ポケモン」を守れ① オーストラリア山火事で絶滅の危機

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研究チームが生活圏の再生に乗り出す

種の存亡が危機にさらされているフクロムササビ(Photo: Wikipedia)

 コアラやカンガルーと同じ有袋類でありながら、ユーカリ林を滑空できるオーストラリア固有の動物「フクロムササビ」。大きな耳を立て、丸い目を見開いて空を駆ける様子は、まるでアニメのモンスターのようで可愛らしい。ところが、3年前の大規模な山火事で絶滅の危機に瀕している。このため、研究者や自然保護団体のチームが保護に乗り出した。

フクロムササビとはどんな動物なの?

 フクロムササビは英語名を「サザン・グレーター・グライダー」(Southern Greater Glider)、学名を「Petauroides volans」という。「世界自然保護基金(WWF)オーストラリア」によると、体長35〜45センチとネコくらいの大きさで、体重は1〜2キロ。ふさふさした毛で覆われた身体は白から黒まで自在に変色する。

 グライダーの名の通り、木と木の間を最長で約100メートル飛ぶ能力を持つ。前脚から後脚まで発達した飛膜を広げ、45〜60センチの長いしっぽで舵を取って最大90度、進行方向を変えることができる。滑空できる哺乳類としては国内で最大とされる。

 生息地はオーストラリア北東部クイーンズランド州から東部ニュー・サウス・ウェールズ州、南部ビクトリア州に至る東海岸沿いの森林。従来は1種と考えられてきたが、最近の研究で「Petauroides volans」のほかに「Petauroides minor」、「Petauroides armilatus」の合計3種が確認されている。

フクロムササビの生態について解説したYouTube動画(WWFオーストラリア)

山火事で生息域の3分の1焼失

 夜行性で、昼は樹齢の高いユーカリの木にできるくぼみや穴の巣に身を潜め、夜になると木から木へ滑空しながら活動する。主にユーカリの葉を食べて生活している。地上から数十メートル上の木と木の間を生活圏としていて、地面にはめったに降りて来ないため、地上からの観察は難しい。定住性が高く、一定のテリトリーからほとんど移動しないことも分かっている。

 こうした古いユーカリ林に生活を依存した生態のため、近年は森林伐採や開発、気候変動などによって生息数が激減している。オーストラリア自然保護基金によると、生息数は過去20年間で80%減少したという。

 そんなフクロムササビに壊滅的な打撃を与えたのが、2019年末から20年初頭にかけてオーストラリア東部の広範囲を襲った史上最大規模の山火事「ブラック・サマー」(黒い夏)だ。生息域の3分の1が焼失し、種の存亡が危ぶまれている。オーストラリア政府は22年7月、フクロムササビを1999年連邦環境保護・生物多様性保全法に基づく絶滅危惧種に指定した。

 そこで、オーストラリア国立大(キャンベラ)とWWFオーストラリア、森林保護団体「グリーニング・オーストラリア」の合同チームが、フクロムササビの繁殖を回復させるための共同研究を立ち上げた。ハイテクを駆使した起死回生の取り組みとは?

②に続く。

■ソース
“The Greatest Glider of All”(WWF Australia)
Endangered greater gliders adapt quickly to nest boxes after Black Summer(ABC News)

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