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鉄鉱石先物4%急落 中国政府が価格監視強化、コロナ感染拡大も懸念材料に

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オーストラリア最大の輸出商品

西オーストラリア州のジンブルバー鉄鉱石鉱山(Photo: BHP)

 オーストラリア最大の輸出商品である鉄鉱石の先物価格が16日、シンガポール取引所で急落した。公共放送ABC(電子版)がブルームバーグ電を元に報じたところによると、指標となる鉄鉱石先物(中国輸入価格)は13日に1トン当たり125.50米ドルと昨年6月以来の高値を記録していたが、週明け16日には120.40米ドルと4.0%下落した。

 中国政府の国家発展改革委員会(NDRC)が、鉄鉱石価格への介入に乗り出したためと見られている。同委員会は、鉄鉱石取引の虚偽の情報拡散や不正な価格釣り上げなどに対する監視を強化すると発表していた。昨年12月の「ゼロ・コロナ政策」解除以降、中国で約6万人が死亡したと発表されたことも、景気回復の遅れが鉄鉱石需要を鈍化させるとの思惑につながったもようだ。

 また、中国は昨年、政府系の国策企業「中国鉱物資源集団」を設立しており、同国の鉄鋼大手20社の鉄鉱石調達を同社に集約する方針だ。購買力を高めて価格決定の主導権を握る狙いがある。

中国向けは鉄鉱石輸出額全体の8割超

出典:Investing.com(作成:守屋太郎)

 鉄鉱石価格はコロナ禍の世界的なサプライチェーンの目詰まりを背景に、2021年中頃に1トン当たり200米ドル以上の高値を付けた(グラフ)。反落を経て、21年末から22年中頃にかけて反発した。その後、世界経済の減速の見通しからずるずると値を下げ、昨年11月には80米ドル前後の底値まで下落していたが、年末から年初にかけて再び上昇に転じていた。

 オーストラリアは、鉄鉱石の世界貿易額の53%(2021/22年度=豪産業科学資源省)と圧倒的なシェアを誇る最大の輸出国。主に西オーストラリア州北西部ピルバラ地区で産出し、生産量のほとんどを輸出している。同年度の鉄鉱石輸出額は1,330億豪ドル(約11兆9,000億円)とオーストラリア最大の輸出商品となっており、中でも中国向けは1,089億豪ドルと輸出額全体の82%を占める得意先となっている。

 豪中関係の悪化を背景に中国は豪州産の石炭や大麦、ワインなどを事実上禁輸としている。しかし、鉄鉱石は中国の経済成長に欠かせない重要な商品であるため、制裁の対象としていない。

■ソース
Iron ore prices fall as China crackdowns on pricing, COVID deaths surge(ABC News)
Resources and Energy Quarterly December 2022(Department of Industry, Science and Resources, Australian Government)

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