手口が洗練され巧妙に 善意の味方を装うケースも
オーストラリアでは、犯罪シンジケートが洗練された手口で巧妙な詐欺のワナを仕掛けている。公共放送ABC(電子版)によると、国内で2022年に規制当局に報告された詐欺の件数は20万件以上、被害額は5億6,800万豪ドル(約520億円)に達した。
詐欺への注意を呼びかけている同国の「消費者行動法律センター」(CALC)は、手口が巧妙化しており、悪意を見抜くことが難しくなっていると指摘している。CALCのジェラード・ブロディ代表はABCのテレビ番組「ザ・ドラム」でこう警鐘を鳴らした。
「詐欺は非常に洗練されてきています。(被害者側に寄り添った)専門家を装うケースがあります。オンラインの要求やテキストメッセージは常に疑ってください」
味方と思わせる巧妙な手口とは?
ABCによると、ウィリアム・ノルさん(17歳)はある日、「あなたの端末でアップルペイ(米アップルの決済システム)が停止されました。こちらのリンク先をクリックしてください」とのテキストメッセージを受信した。ノルさんは何もしなかったが、翌日、英国から国際電話があった。
電話に出たノルさんに相手は「あなたは詐欺の被害に遭っています。あなたの口座からお金が引き出されています」と話した。相手はニセの保険業者登録番号を提示して本物の保険会社の職員であると信じ込ませ、騙し取られた金を取り戻すと伝えたという。
「この人たちは僕の味方なんだと、僕は完全に信じきっていました」(ノルさん)
相手は詐欺集団から預金を守るため、新しい口座に金を移動するよう、ノルさんを誘導した。ノルさんは貯金の全額の5,000豪ドルを「安全な」口座に送金した。すると通話は突然来られ、初めて詐欺被害に遭ったことが分かった。
ノルさんは泣き寝入りするしかなかった。ウェストパック銀行に被害を通報したものの、合法的な銀行間送金だったため、5,000豪ドルを取り戻すことはできなかった。
■ソース
William Knoll’s scammers made it sound like they were on his side(ABC News)