それでも金融引き締め継続示唆
中央銀行の豪準備銀(RBA)のフィリップ・ロウ総裁は17日、オーストラリア連邦下院議会の経済委員会で金融政策について証言した。この中でロウ総裁は、昨年来の急激な利上げが家計に打撃を与えていることを認めた上で、想定外の高いインフレを退治するため、今後も利上げを継続する姿勢を示した。
ロウ総裁は、急激な政策金利の引き上げについて「(利上げを)やり過ぎて、これ以上上げる必要がなくなって、我々の想定よりも景気が落ち込むリスクはある」と述べた。その一方では「同時に、(利上げが)十分ではないために、インフレがもっとしつこくなり、下がらなくなるリスクもある。それらのバランスを取るのが私たちの仕事だ」と述べた。
ロウ総裁には、現在の激しいインフレを見誤った痛い過去がある。2021年の時点では「24年まで利上げは行わない」と言明していた。しかし、インフレを抑え込むため、昨年5月以降今年2月まで9会合連続で政策金利を引き上げて3.35%とし、引き上げ幅は3.25ポイントに達した。現行制度下で前例のないハイペースだ。インフレによる生活コストの上昇に加え、利上げで月々の住宅ローン返済額が増え、勤労者の家計を圧迫している。
インフレは破壊的、社会格差広げる
それでも、消費者物価指数(CPI)の上昇率は22年12月期に前年同期比7.8%と33年ぶりの水準で高止まりしており、「利上げの影響はまだ完全に反映されていない」(ロウ総裁)。急激な利上げは「多くの家庭に重圧を与えている。利上げと住宅価格の下落により、多くの人が非常に苦しい状況に置かれている」と利上げの副作用を認めた。
その上でロウ総裁は「インフレは我々がわずか数カ月前に想定していたよりも、はるかに高い水準にある。高いインフレは破壊的で、侵食性がある。家計に深刻な打撃を与え、人々の貯蓄を目減りさせる。低所得者への打撃はより大きく、社会格差を広げる」とインフレのデメリットを強調。インフレを抑える手段として「金利(操作)は非常に有効な手段だ」と述べ、今後の利上げ継続を示唆した。
ロウ総裁は1961年生まれ。高校時代からアルバイトでシドニーのRBA本店に勤務した生え抜き。ニューサウスウェールズ大学卒商学部卒。後に米マサチューセッツ工科大学(MIT)の博士課程で、インフレ・ターゲットやリフレ政策を主唱するポール・クルーグマン氏(ノーベル経済学賞受賞)に師事した。
7年間の総裁任期は今年9月で切れる。通貨の安定と雇用の最大化、経済的繁栄を目的とするRBAは金融政策の独立性が担保されているが、総裁の任命権限は連邦政府(財務相)にある。アルバニージー首相は現時点で同総裁の再任について明言を避けている。
■ソース
RBA boss Philip Lowe admits rate rises are hurting households but says they will go higher(ABC News)