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オーストラリア原潜配備の意味とは?② 南西太平洋の抑止力強化は期待できるがコストは莫大

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史上最大の国家プロジェクトに

米潜水艦から発射される巡航ミサイル「トマホーク」(Photo: US Navy)

「オーストラリア原潜配備の意味とは?① 核兵器搭載せず不拡散に配慮も、安保政策の大転換点に」から続く

 豪米英の首脳が14日に発表した攻撃型原子力潜水艦のオーストラリア配備計画。アングロサクソン陣営の主要3カ国としては、インド太平洋の覇権を争う中国に有事の制海権掌握能力を示し、抑止力を高める狙いがある。(解説:ジャーナリスト・守屋太郎)

 米英を中核とする西側陣営にとって、日本列島からオーストラリアに至る南北軸は、太平洋とインド洋をつなぐエネルギーと貿易のルートとして死活的なライフラインとなっている。有事の際は、敵陣営の外洋進出を阻む防衛線としても戦略的に重要だ。日本軍がかつてダーウィンなどオーストラリア北部を繰り返し空爆したり、シドニー湾の海軍基地を潜水艦で雷撃したりしたのも、連合軍の兵站を断つ目的があった。

 旧式の通常型潜水艦に代えて、秘匿性が高く長期間の潜水能力を持つ攻撃型原潜をオーストラリアに配備すれば、対中抑止力の大幅な向上が期待でき、「地域の安全保障に資する」(日本の岸田文雄首相)可能性がある。

国防費のGDP比は2.5%超に

 ただ、原潜開発計画の総コストは約30年間で最大3,680億豪ドル(約33兆円)と試算される。約2万人の雇用を創出するとされ、南部アデレードの海軍造船所やパースの潜水艦基地を中心に幅広い関連産業で経済効果が見込めるが、前例のない予算をつぎ込むオーストラリア史上最大の国家プロジェクトとなる。

 オーストラリア陸軍のミック・ライアン元少将(米シンクタンク「戦略国際問題研究所」研究員)がABC電子版に書いた寄稿文(14日掲載)によると、32年間のコストを1年で割るとおよそ110億豪ドル(約1兆円)になる。オーストラリアの国防予算は現在、年間486億豪ドルと国内総生産(GDP)の2.11%を占めるが、潜水艦プロジェクトは国防費の対GDP比を0.5ポイント押し上げるという。

 独裁国家を除けば、一般的な民主国家の国防費は経済規模にほぼ比例する。オーストラリアの原潜配備は抑止力を強化し、地域安保に資することが期待される一方で、人口約2,600万人のミドルパワーにとって適正な予算規模かどうかは、議論の余地がありそうだ。

14年迷走、遅すぎた配備決定の代償

 また、ライアン元少将は「政府は軍事力が下がるリスクについて説明していない」と述べ、巨額の潜水艦事業によって他の軍事予算が削減される可能性に懸念を示した。

 その上で元少将は、日本、フランス、米英と右往左往した潜水艦計画と、オーストラリア政府のこれまでの無策を次のように批判している。

「国防白書が2009年に次世代潜水艦の導入を発表してから14年が経った。その間に6人の首相が交代し、(潜水艦計画が)迷走した後、ようやく解決策を示した。過ぎ去った14年の間に中国共産党は攻撃的になり、台湾奪回を待ちきれなくなった。今後の航海は、順風満帆とはならないだろう」

■ソース
Joint Statement on AUKUS, 14 Mar 2023, Prime Minister, President of the United States of America, Prime Minister of the United Kingdom(Prime Minister of Australia)
Nuclear submarine deal will deeply impact the Australian Defence Force. Has the government got it right? By Mick Ryan(ABC News)

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