イスラム原理主義に同調する勾留者に攻撃される恐れ
出兵先のアフガニスタンで無抵抗の男性を射殺したとして「戦争犯罪」の疑いで逮捕、起訴されたオーストラリア陸軍特殊部隊の元兵士、オリバー・シュルツ容疑者(41)に対し、シドニーのダウニング・センター地裁は28日、保釈を認める決定を下した。イスラム原理主義に同調する勾留者に危害を加えられる可能性があるとして、弁護人が保釈を求めていた。複数の地元メディアが伝えている。
公共放送ABC(電子版)などによると、シュルツ容疑者は2012年5月、アフガニスタン南部ウルズガン州で無抵抗の住民男性、ダッド・モハマッドさんを銃撃して殺害した疑い。シュルツ容疑者は作戦行動中だったが、モハマッドさんは武装していなかった。ABCの時事番組「フォー・コーナーズ」は20年、同容疑者と見られる兵士が小麦畑でモハマッドさんを撃つ映像を公開し、オーストラリア特殊部隊の闇を暴露していた。
オーストラリア連邦警察は22年5月にシュルツ容疑者の自宅を家宅捜索し、先週、殺人罪で逮捕・起訴していた。英紙「ガーディアン」(豪州電子版)によると、オーストラリア国防軍兵士の戦争犯罪に絡んで国内法の殺人罪が適用されるのは今回が初めて。
弁護人は27日、ダウンニング・センター地裁内の施設に勾留されている同容疑者が、イスラム原理主義勢力に同調する別の勾留者と接触し、危害を加えられる恐れがあるとして保釈を求めていた。
これに対し、同地裁は容疑者が「潜在的に危険な勾留環境にある」ことを認め、国家安全保障上の観点からも容疑者と弁護人が連絡を取りにくい状況にあると指摘。保証金20万豪ドルを預けること、夜間外出禁止、アフガニスタン駐留時の元同僚への連絡禁止を条件に、保釈を認めた。
次回の公判は5月16日に開かれる。同容疑者が有罪となれば最長で終身刑となる可能性がある。
オーストラリア軍は2001年の米同時多発テロを受けて、米・英軍とともにアフガニスタンに侵攻したが、イスラム原理主義勢力・タリバンの首都カブール奪回直後の21年8月に撤退。イスラム原理主義勢力の掃討という当初の目的は果たせず、オーストラリア史上最長の20年に及んだ戦争は失敗に終わっている。
■ソース
Former SAS soldier Oliver Schulz charged with war crime granted bail(ABC News)