賃金インフレの悪い連鎖、引き起こす恐れも
オーストラリアの労組が最低賃金の7.0%引き上げを要求していることについて、ジム・チャーマーズ連邦財務相(労働党)は30日、独立機関の公正労働委員会に政府が金額を押し付けることはないと断った上で、生活コストの上昇に応じた賃上げは妥当だと指摘した。公共放送ABCラジオのインタビューに答えた。
その上で財務相は、インフレの原因は高い賃金ではなく、ウクライナ戦争とサプライチェーンの問題にあるとし、「低所得者層が高い給料をもらっていることが我が国のインフレを誘発している、という議論は馬鹿げている」と主張した。
財務相の発言は、過度な賃上げによるインフレへの悪影響を懸念する中央銀行・豪準備銀(RBA)のフィリップ・ロウ総裁との意見の相違を露呈した格好だ。
ロウ総裁はかねてから、賃金と物価の上昇が互いに連鎖して止まらなくなる「賃金インフレ・スパイラル」を警戒してきた。モノの値段と異なり、賃金は一度上がるとなかなか下がらない「下方硬直性」があることから、抑制のない賃金上昇はインフレを悪化、長期化させる恐れがあるためだ。
勤労者にとって、給料は上がれば上がるほど嬉しい。オーストラリアでは現在、インフレが賃金の伸びを大幅に上回っており、貯蓄や賃金がどんどん目減りしているのも問題だ。しかし、経済全体を俯瞰すると、行き過ぎた賃上げはインフレを制御不可能にし、かえって生活を苦しめることになりかねない。