排出量多い215社対象 2030年までに43%削減目指し
オーストラリアで温室効果ガスの排出量削減を目的とした「セーフガード・メカニズム改正法案」が30日、連邦上院と下院で可決、成立した。排出量が多い215社を対象に、2030年まで毎年4.9%以上の排出削減を義務付け、未達の企業にはペナルティーとして排出権を購入させる。今年7月に施行される。
現地メディアによると、修正案は29日早朝までの徹夜の審議を経て、30日に中道左派の与党労働党と急進左派の「グリーンズ」(緑の党)などの賛成多数で連邦上院を通過。下院に送られ、与党などの賛成多数で可決した。
22年5月の選挙で政権を奪回した労働党は、「30年までに05年比で43%削減」を目指し、前保守連合政権の「30〜35%削減」から大きく踏み込んだ目標を掲げた。22年9月には「30年43%削減」と「50年実質ゼロ」を初めて法律に明記した「気候変動対策法」を成立させた。続いて、セーフガード・メカニズム(前政権下の16年施行)の強化を政権の気候変動対策の中核と位置付け、同法案の可決なくしては43%削減目標の達成は不可能だとして、3月末の会期終了までの成立を図っていた。
しかし、与党勢力が過半数に満たない上院では、経済に打撃を与えるとして最大野党・保守連合が反対した。上院でキャスティングボートを握るグリーンズも、「石炭・天然ガスの新規開発プロジェクト全廃」という厳しい条件を与党が飲まない限り、法案に賛成しないと表明。法案は保守、左派の双方から挟み撃ちされ、成立の見通しが立たなかった。
交渉を続けていた労働党とグリーンズは、会期末が迫った27日になってようやく折衷案で合意。同メカニズムに参加する企業が30年までに排出できる温室効果ガスの総量を二酸化炭素換算で12億3,300万トン、1年当たり1億4,000万トンに規制するとした修正法案を可決し、ギリギリのタイミングでようやく成立にこぎ着けた。
排出量の総量規制導入により、関連企業のコストはさらに上昇する。オーストラリアの有力な輸出商品である石炭や天然ガスなどの化石燃料を手がける企業への影響は避けられない。
グリーンズは、計画中の石炭・天然ガスの新規プロジェクト116件の約半数を中止に追い込むと意気込んでおり、今後も新規開発の全廃を働きかけていく方針だ。一方、産業界にも配慮した現実路線を採る労働党は昨年の選挙で、化石燃料の新規開発を中止しないと明言していた。グリーンズに妥協した排出量の総量規制は、公約違反には当たらないと主張している。
■ソース
Parliament passes major election promise after fierce debate(news.com.au)