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オーストラリア先住民の地位認める歴史的な一歩に 非先住民との格差は依然大きく

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先住民の平均余命は約14年短い 居住区では犯罪や暴力まん延

メルボルン市内で2019年に行われた「侵略の日」のデモ行進(Photo: Wikipedia)

 オーストラリア先住民であるアボリジニ・トレス海峡島しょ民が「最初のオーストラリア人」であることを明記する憲法改正案が30日、連邦議会に上程された。2022年7月にシンクタンク「オーストラリア・インスティテュート」が実施した世論調査によると、改憲案を「支持する」と答えた人は65%、「不支持」は14%、「分からない」は21%と、国民の過半数は改憲に前向きだ。実現すれば、欧州人による過去の侵略と迫害の歴史を認める象徴的な出来事となる。しかし、先住民と非先住民の格差というオーストラリア社会が抱える問題が、改憲によって簡単に解決されるわけではない。

 先住民は最も古くて約6万年前からオーストラリア大陸に居住していたとされる。しかし、1788年1月26日に英国の第1船団が現在のオーストラリア東部シドニー湾に到達して入植を開始して以来、欧州人に駆逐され、海外から持ち込まれた疫病や虐殺などによって人口を減らした。先住民が全人口に占める割合は現在、約2%となっている。

 20世紀に入っても先住民の子どもの隔離政策が行われるなど迫害は続いたが、近年は地位回復の動きが強まっている。1993年に先住土地権が認められ、2008年にケビン・ラッド首相(当時)が初めて「侵略」を謝罪した。1月26日の祝日「オーストラリア・デイ」を「侵略の日」に改めるべきだとの声も強まっている。

 一方、先住民と非先住民の格差は大きい。先住民が多く住む遠隔地での先住民の平均余命は非先住民と比べて、男性で13.8年、女性で14年短い(15〜17年、王立飛行医師サービス=RFDA調べ)。

 遠隔地にある先住民居住区では、犯罪率の高さ、治安の悪さ、子どもへの性的虐待や暴力、アルコール・薬物中毒のまん延なども社会問題となっている。07年には連邦政府が北部の居住区に治安部隊を投入した。法律でアルコール販売を禁止するなど強制介入した。介入は国際社会から人権無視との批判を浴びたが、鎮圧には一定の効果をあげた。

 ところが、アルコール禁止などの一連の法律の期限が22年に切れると、北部準州の中心都市アリススプリングスでは、酒に酔った子どもや若者が暴力を振るったり、商店を破壊したりするなど治安が急速に悪化。アンソニー・アルバニージー首相は今年1月、現地を訪れて準州政府と協議し、禁酒令を部分的に導入するなど介入を再開している。

■ソース
Polling – Voice to Parliament in the Constitution, July 2022(The Australian Institute)

Best for the Bush – Rural and Remote Health Base Line 2022(Royal Flying Doctors Service)

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