国政に先住民の声を反映させる「ボイス」に反対
オーストラリア連邦議会の最大野党・自由党は5日、オーストラリア先住民の地位をめぐる与党労働党の憲法改正案を支持しない方針を決めた。公共放送ABC(電子版)が伝えている。
自由党は党会議の決定を受け、改憲草案の主な条項のうち、◇先住民が「最初のオーストラリア人」(ファースト・ピープル・オブ・オーストラリア)であると明記することは支持する。しかし、◇先住民問題を国政に反映させる機関「先住民の声」(ボイス)を設置することについては反対する。
ピーター・ダットン自由党党首(保守連合=自由党、国民党=代表)は「先住民の地位を憲法に定めることについては賛成する」と述べた。その上で、アンソニー・アルバニージー首相と政権の改憲案そのものに対しては「ノーだ」と表明した。
ダットン党首は、「ボイス」を設立したところで先住民の立場は変わらないと主張。「健康状態の改善や治安の回復、家庭内暴力の減少といった先住民の問題を解決するには、地域の先住民社会の長老の声を聞く必要がある」(同党首)として、改憲案が定める国政レベルの機関ではなく、地域レベルでの声を反映させる仕組みが必要だと訴えている。
自由党は「影の内閣」の議員については改憲案への不支持を強制するが、一般議員については党議拘束をかけないとしている。今回の決定に対しては、党内の「3〜4人の議員」(同党首)から反発の声が出ているという。
自由党と保守連合を構成する野党国民党も与改憲案への反対を表明している。もっとも、改憲法案については、与党が過半数を制している下院に加え、過半数に満たない上院でも左派の野党、環境保護政党「グリーンズ」(緑の党)や無所属の一部が支持している。上下両院で、賛成多数で可決・成立する公算が高い。
中道左派の労働党は2022年5月の連邦選挙で「1期目に憲法改正の国民投票を行う」と公約。選挙の結果、中道右派の保守連合から政権を奪回した。与党は今年10〜12月の国民投票実施を視野に法案の成立を目指している。
■ソース
Liberal Party confirms it will oppose the Indigenous Voice to Parliament(ABC News)