アジア太平洋で「ヘルスサイエンス事業」強化
キリンホールディングス(HD)は27日、オーストラリアの健康食品最大手「グラックモアズ」(本社シドニー北郊ワリーウッド)の全株式を取得して子会社化する計画を発表した。取得価格は18億8,000万豪ドル(約1,692億円)となる見通し。
キリンHDは中期経営計画で「ヘルスサイエンス事業」に力を入れている。オセアニアや中国、東南アジアに強いブラックモアズの取得は、同事業を「強く補完する」という。同社の買収を足がかりにアジア太平洋地域の「ヘルスサイエンスのリーディング・カンパニー」を目指すとしている。
ブラックモアズは1932年創業。同名ブランドのサプリメントのほか、医療機関向けの「バイオシューティカル」、ペット向けの「ポー・バイ・ブラックモアズ」を展開している。東南アジアには1973年、中国には2013年から進出した。キリンによると、22/23年度の売上収益のアナリスト予想は6億6,300万豪ドル。このうちオーストラリアとニュージーランドが約45%、中国が約25%、その他の海外が約30%を占める。
両社は26日、株式取得に関する合意を締結した。7月のブラックモアズの株主総会、オーストラリアの裁判所、オーストラリア外国投資審議委員会などの承認を経て、8月にオーストラリア会社法に基づく上場会社の株式取得手法「スキーム・オブ・アレンジメント」(SOA)を実行する計画だ。買収が実現すれば、豪証券取引所で上場廃止となる。
キリンHDは98年、オーストラリアの人気ビール「トゥーヒーズ」や「フォーエックス」などを手がける酒造大手ライオン・ネイサン(現社名ライオン)に資本参加し、09年には完全子会社化するなど、オーストラリアの酒類市場で存在感を高めてきた。21年にはクラフトビール「ストーン&ウッド」などを製造する独立系メーカーも完全小会社化。22年の連結売上収益1兆9,895億円のうち「オセアニア酒類」部門は2,559億円と12.9%を占めている。事業利益も全体の16.5%を稼いでいる。
これに約600億円のブラックモアズが加われば、オーストラリア事業のポートフォリオが広がるともに、キリングループ全体に占める重要性がいっそう増すことになる。
■ソース
豪州の健康食品(ナチュラル・ヘルス)会社Blackmores Limited社の株式取得(小会社化)に向けた契約の締結に関するお知らせ(キリンホールディングスIRイベント資料=機関投資家向け)