水素エネルギー設備や再エネ発電所の建設も視野に
オーストラリアの電力大手AGLエナジーは28日、東部ニューサウスウェールズ州ハンターバレーにあるリッデル石炭火力発電所の運転を停止した。1971年に運転を開始した同発電所は、現時点で稼働しているも石炭火力発電所としては最も古かった。温室効果ガス削減を目的とした火力発電所廃止の流れを受け、52年間の歴史に幕を閉じた。
AGLは2024年から約2年かけて発電所を解体し、400メガワットの大規模定置型蓄電池を置く再生可能エネルギー拠点「ハンター・エネルギー・ハブ」として再整備する計画だ。次世代燃料として注目される水素エネルギー設備を検討しているほか、太陽光や風力、廃棄物を利用した発電施設の導入についても他社と協議していくという。
ダミアン・ニックス最高経営責任者は声明で「リッデル発電所はこれまで平均100万戸の家庭に電力を供給してきた。1つの時代が終わったが、再エネ拠点への転換という次の時代の幕開けでもある」と述べ、脱炭素に向けた取り組みを強調した。
同社は今後、再エネ拠点の整備などを通して、1年当たり800万トンの温室効果ガスを削減していく計画。これは、オーストラリア全体の発電部門の温室効果ガス排出量(2021年)の約5%に相当するという。
化石燃料の資源が豊富なオーストラリアでは従来、発電量に占める石炭火力発電の割合が圧倒的に多かったが、近年は太陽光や風力の大規模発電所が急増。オーストラリア連邦気候変動・エネルギー・環境・水資源省によると、発電量に占める再エネ比率は2021年に29%まで拡大した。太陽光が12%、風力が10%、水力が6%を占めている。
脱炭素化を推進するオーストラリアの連邦労働党政権は、温室効果ガス排出量を2030年までに05年比で43%削減するとの目標を掲げている。これを達成するため、発電量に占める再エネ比率を30年までに82%まで高める計画だ。天候によって発電量が上下する再エネ電力を安定的に供給するため、定置型蓄電池の設置や送電網の再整備が急務となっている。
■ソース
AGL’s Liddell Power Station closes after 52 years of operation(AGL Media Centre)