9日発表の新年度予算案で生活費緩和の政策パッケージ発表へ
オーストラリアの中央銀行、豪準備銀(RBA)が2日、市場予想に反して政策金利を引き上げたことについて、ジム・チャーマーズ連邦財務相は同日の会見で「既に苦しんでいる多くの国民にとっては非常に難しい決断。我が国の経済にとってインフレは依然として大きな試練だ」と述べた。
また、チャーマーズは記者団との質疑応答で「利上げは困難な経済状況を思い起こさせる、とても厳しく残酷なものだ」と語り、国民生活がインフレと利上げによる生活コストの上昇によって打撃を受けているとの見方を示した。財務相は9日に2023/24年度(23年7月〜24年6月)連邦予算案を発表し、生活費の負担増大を緩和する政策パッケージを打ち出す予定だ。
中銀総裁は利上げの正当性主張
RBAのフィリップ・ロウ総裁は同日夜、パースで開かれた夕食会のスピーチで「高い金利が多くの人に歓迎されるものではないことは分かっているが、それをしなければ高いインフレが持続し、結果的にはさらに高い金利と雇用情勢の悪化をもたらすことになる。これを回避するのが最適な選択だ」と語り、利上げの正当性を主張した。
その上で総裁は、オーストラリア経済は雇用の安定とインフレ撃退を両立する「狭い道」を歩んでおり、物価上昇を抑えた上で景気後退を回避するソフトランディング(軟着陸)は依然として可能だと指摘。今後も「妥当な時間内にインフレを目標内まで下げるには、さらなる一定の金融引き締めが必要になるかもしれない」として、再利上げの可能性を排除しなかった。
「来年3月期に利下げ始まる」と有力エコノミスト
一方、著名エコノミストであるウェストパック銀のビル・エバンス氏は2日、顧客向けの短信リポートで「6月四半期の消費者物価指数(CPI)は6.3%、トリム中央値(極端な物価変動を除いた値)で6.1%」まで落ち付くと予測。「8月までに個人消費を中心に景気は鈍化し、23年後半の経済成長は停滞すると見られる」と指摘した。
こうした景気判断から、エバンス氏は「今後は成長の減速とインフレの鈍化により、金融引き締めの姿勢は弱まる。政策金利は今年いっぱい据え置かれた後、来年3月期には利下げが始まるだろう」との見通しを示した。
■ソース
Press conference, Blue Room, Canberra, Transcripts(The Hon Dr Jim Chalmers, MP, Treasurer)
Remarks at the Reserve Bank Board Dinner, Speech, Phillip Lowe, Governor(Reserve Bank of Australia)
BA Board hikes the Cash Rate by 0.25%, Bill Evans, Chief Economist(Westpac IQ)