年末GDP成長率は1.75% 従来予測から0.5ポイント低く
オーストラリア経済は高いインフレと利上げで打撃を受けており、リセッション(景気後退=2四半期連続のマイナス成長)こそ回避すると見られるものの、年末にかけて減速のペースを早めそうだ――。中央銀行の豪準備銀(RBA)は5日、四半期の経済見通しを発表し、今年6月、12月時点の成長率をそれぞれ下方修正した。主な経済指標の予測値は以下の表の通り。
これによると、23年6月期末の実質国内総生産(GDP)の成長率は前年同期比1.75%と、2022年12月期末時点の2.7%から大幅に減速する見通し。2月時点の2.5%から0.5ポイント下方修正した。23年12月期末時点の予測値も1.25%と従来の1.5%から0.25ポイント下方修正した。
成長率はその後、24年6月1.5%(従来予測と同じ)、24年12月1.75%(0.25ポイント上方修正)、25年6月2.0%(0.25ポイント上方修正)と従来予測より上振れするものの、長期平均を下回る低い水準で推移する。
インフレが3%に戻るまで2年かかる
景気の減速に伴い、失業率は緩やかながら悪化していく。失業率は22年12月期末時点で3.5%(四半期の平均値)と歴史的低水準にあったが、23年12月に4.0%、24年6月に4.25%、24年12月に4.5%まで上昇する。
消費者物価指数(CPI)の上昇率については、「インフレ目標(2〜3%)の上限まで下がるのに今後2年かかる」との従来の見通しを据え置いた。CPIは22年12月期に7.8%でピークに達した後、23年6月期に6.25%(従来予測は6.75%)、23年12月期に4.5%(従来予測は4.75%)と予測よりも鈍化のスピードは早まるものの、3.0%に落ち着くのは従来予測通り25年6月期となる見込みだ。
消費減速と資産下落が成長の足かせに
RBAは報告書で景気の現状について、こう指摘している。
「パンデミック(コロナ感染拡大)の行動制限からの回復がほぼ一巡し、オーストラリアの経済成長は22年下期に緩やかになった。個人消費はここにきて減速のペースを早めている。生活コストの上昇と高い金利が、家計の実質可処分所得に打撃を与えている。過去1年間の住宅価格の下落も家計の資産価値を縮小させている」
今後の成長見通しについては、次のように予測している。
「GDP成長率は今後、(従来の)トレンドを下回ると予測される。(今年末に)1.25%付近で底を打った後、高いインフレと高金利による重しが徐々に薄れ、家計の資産価値も回復し、25年中頃までには2%に緩やかに回復するだろう」
■ソース
Statement on Monetary Policy, May 2023(Reserve Bank of Australia)