貿易関係の安定化で一致
中国を訪問したオーストラリアのドン・ファーレル連邦貿易相は12日、王文濤(おう・ぶんとう)商務部長と会談した。オーストラリアと中国の貿易相が対面で会談するのは、両国関係が悪化した2019年以来初めて。
ファーレル貿易相の13日の発表によると、両国は「既存の自由貿易協定などの枠組みの下で通商関係を安定化させるため、対話を加速させる」ことで一致した。気候変動やデジタル貿易、電子商取引、世界貿易機構(WTO)改革などの分野でも協力強化について話し合った。
中国が依然として大麦やワインなどのオーストラリア産品を市場から締め出している問題をめぐっては、ファーレル貿易相は速やかな規制解除を求めた。これに対し王法務部長は、大麦の高関税の見直し作業が進んでおり、ワインの貿易障壁撤廃についても同様の進展が期待できるとの認識を示した。
オーストラリア国籍保持者2人が、中国当局にスパイ容疑で拘束されている問題については、「建設的で率直な議論を行った」(貿易相)という。
高レベル対話再開も安保は圧力強める
豪中関係は近年、中国の海洋進出による安保上の懸念などを背景に冷え込んでいる。スコット・モリソン首相(当時)が2019年、新型コロナの起源をめぐる独立した調査の実施を要求すると、中国側は強く反発し、オーストラリア産の石炭や大麦、ワイン、イセエビなどに高関税をかけるなどして事実上禁輸した。
オーストラリアの政権交代(22年5月)以降は、雪解けムードも熟成されつつある。ペニー・ウォング外相が22年12月、オーストラリアの閣僚としては3年ぶりに訪中。中国はオーストラリア産石炭の輸入を再開し、4月には大麦の関税を再検討することでも合意した。これを受けてオーストラリアは大麦の高関税に関するWTOへの提訴を一時取り下げている。
ただ、以前は「中国寄り」とされた労働党政権だが、安保面では米英などとともに事実上の対中包囲網を加速させた前保守政権の政策を踏襲している。3月には、中国を念頭に置いた米英豪の安保枠組み「オーカス」(AUKUS)の下で原子力潜水艦をオーストラリアに配備する計画を発表。24日にはシドニーで、米日豪印4カ国による枠組み「クアッド」の首脳会議を主催するなど、安保政策では中国への手綱を緩めていない。