物価の影響を引いた実質賃金は3.3%下落
オーストラリアの賃金が、モノやサービス物価に遅れる形で上昇してきた。オーストラリア統計局(ABS)の17日の発表によると、3月期(1〜3月)の賃金物価指数(WTI=季節調整済み)は前年同期比で3.7%上昇し、2012年9月期(7〜9月)以来の高い伸びとなった。前期の3.4%から加速した。前期比では0.8%の上昇(前期と同じ)だった。
公共放送ABC(電子版)によると、市場の事前予想は前年同期比3.6%、前期比0.9%のそれぞれ上昇と大きく変わらなかった。
WTIは幅広い職種での臨時賞与を除く時間給の伸びを示す。消費者物価指数(CPI)とともに、インフレの動向を知る上で重要な経済指標の1つ。
WTIは21年3月(前年同期比1.4%の上昇)を底に8期連続で上昇している。ABSは物価統計部門の責任者を務めるリー・メリントン氏はWTIが11年ぶりの高い上昇率を記録したことについて「低い失業率、労働需給のひっ迫、高いインフレを反映したものだ」と説明した。
ただ、賃金の伸びはまだインフレに追いついていない。CPI上昇率は22年12月期に前年同月比7.8%と33年ぶりの高水準を記録した後、3月期に同7.0%に減速。中央銀行の豪準備銀は「インフレは頭を打った」と分析しているが、過去30年で経験したことのない激しいインフレは続いている。
賃金は物価と一定の間を置いて変動する「遅行指数」とされる。昨年来の激しいインフレに引きずられる形で賃金も上昇してきたが、賃金の伸びから物価の伸びを引き算した「実質賃金」は、22年12月期のマイナス4.4%から改善したものの、3月期もマイナス3.3%と引き続き下落している。私たちが会社や取引先からもらう給料や売上が、実質的に目減りしている状況に変わりはない。
■ソース
Wage Price Index, Australia(Australian Bureau of Statistics)