信用取引法の下で一定の規制
利子を払わなくても後払いや分割払いが簡単にできる新興の金融サービス「バイナウ・ペイレイター」(今買って後で払う=BNPL)をめぐり、オーストラリア連邦政府は貸し手に一定の規制を設ける方針だ。際限なく借りまくって首が回らなくなるリスクから、消費者を保護する。22日付の公共放送ABC(電子版)が伝えている。
これによると、スティーブン・ジョーンズ連邦金融サービス相は同日、信用取引業界の会議で演説し、BNPLについて「規制されていない、無制限の融資が引き起こす苦しみの連鎖から、人々を守る」と述べた。現状では与信力の低い消費者がいくつもBNPLアカウントを開設できるため、クレジット・カードやローンと比べてはるかに多額の負債を抱える危険があるという。
こうした認識に基づき政府は、クレジット・カードやローンを規制する連邦信用取引法の枠組みにBNPLを組み入れる。BNPLサービスを提供する企業に対し、同法が定める「責任ある貸し出し義務」の順守を求め、金融貸付業免許「オーストラリア・クレジット・ライセンス」の取得も義務付ける。
BNPLはオーストラリアでも利用者が急増しており、政府によると2021/22年度の実働アカウント数は約700万個に達した。同年度の取引金額は約160億豪ドルと前年度比で37%伸びたという。ただ、現状ではクレジット・カードなどの既存の信用取引商品と異なり、法規制の枠外にあったことから、消費者が支払い能力を超える債務を抱えてしまうリスクが高まっていた。
このため、連邦財務省は昨年11月、BNPL規制に関する提案書を発表し、①業界の自主規制に任せる、②信用取引法の下で限定的に規制する、③クレジット・カード企業と全く同様の規制を行う—の3案を提示し、関連業界から意見を募っていた。BNPLは近年普及している「フィンテック」(金融テクノロジー)の1つで、新たな需要を創出するプラス面もある。そのため政府は「イノベーション(技術革新)と消費者保護のバランスを取る」として、②の限定的な規制という折衷案を採用することにした。
財務省は今後、規制の詳細を煮詰め、今年後半に原案を関連業界や消費者団体に提示する。年内に改正法案の議会提出を目指す。