政府・州政府と日本企業などが108億円投資
次世代再生可能エネルギーの主役として期待される水素をオーストラリアから日本に輸出するプロジェクトが、実現に向けて前進している。オーストラリア連邦政府とクイーンズランド(QLD)州政府は26日、QLD州東部グラッドストーン港に水素エネルギーの輸出拠点を開発する「セントラル・クイーンズランド水素プロジェクト」(CQ-H2)の「基本設計」(フロント・エンド・エンジニアリング・デザイン=FEED)に、日本企業など民間と共同で1億1,700万豪ドル(約108億円)を投資すると発表した。
このうち連邦政府のオーストラリア再生可能エネルギー局(ARENA)が2,000万豪ドル、QLD州政府が1,500万豪ドル、コンソーシアム(企業連合)が8,180万豪ドルをそれぞれ拠出する。コンソーシアムには、日本の岩谷産業、関西電力、丸紅、シンガポール政府系のケッペル・インフラストラクチャー、QLD州営電力会社のスタンウェル・コーポレーションが参画している。
CQ-H2は2022年に「フィージビリティ・スタディー」(実現可能性調査=FS)を終え、技術的には実現可能で、適切な政府支援が得られれば採算も取れると結論付けた。今回のFEEDを経て、2024年後半に予定している「最終投資決定」(ファイナル・インベストメント・ディシジョン=FID)で、最終的に事業化の是非を判断する。
計画では、CQ-H2は風力や太陽光などの再エネで精製する「グリーン水素」を生産。低温で液化して日本に輸出したり、運搬が容易なアンモニアの状態にしてシンガポールに輸出したりするほか、国内での供給も検討する。2028年までに1日当たり200トン、31年までに同800トンの生産を目指す。連邦・州政府は、9,000人の雇用創出と、30年間で172億豪ドルの輸出収入を見込んでいる。
オーストラリア政府は、カーボン・ニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた世界的な脱炭素の流れを受け、19年に「国家水素戦略」を発表。水素エネルギーを現在の化石燃料に替わる主力輸出商品に育て、世界の水素産業をリードするとのシナリオを描いている。これを受けて、各地でサプライチェーンの拠点となる「水素ハブ」の開発構想が立ち上がっているが、発表によると今回のFEEDは投資金額としては最大規模だという。
■ソース
Joint media release: Unlocking Australia’s hydrogen potential(The Hon Chris Bowen, Minister for Climate Change and Energy)
Unlocking Australia’s hydrogen potential(The Queensland Government Media Statements)
Central Queensland Hydrogen Project Feasibility Study Report(Stanwell Corporation)