野生のメスと交尾させて駆除
オーストラリアの果物生産に打撃を与えている害虫「フルーツ・フライ」(ミバエの一種)を駆除するため、オーストラリア連邦政府は不妊処理したハエを育てる南オーストラリア州の施設の生産能力を増強する。マレー・ワット連邦農林水産相が30日、発表した。
規模を拡大するのは、南オーストラリア州ポート・オーガスタにある「国立昆虫不妊技術研究所」(SIT)の施設。2016年の稼働を始め、人工的にエックス線を照射して生殖能力をなくした「クイーンズランド・フルーツ・フライ」のオスを1週間当たり2,000万匹育てている。これを小型機などで大量にばら撒き、野生のメスと交尾させる。メスが産んだ卵は孵化しないため、個体数を減らせるという仕組みだ。
ワット農林水産相によると、SITで育てられた不妊バエの多くは、果実や野菜の栽培が盛んなマレー川流域のリバーランド地区に放たれ、フルーツ・フライの大量発生に対応。作物の被害を減らしてきたという。
駆除の取り組みをさらに強化するため、連邦政府は南オーストラリア州政府、生産者団体と共同で300万豪ドル(約2億7,500万円)の予算を投じ、2023年にはSITの生産能力を現在の2倍に拡大する計画だ。
ワット農林水産相は「リバーランド地区のクイーンズランド・フルーツ・フライを撲滅するための南オーストラリア州政府の戦いを引き続き支援していく。破壊的な害虫であるフルーツ・フライの被害から青果産業を守ることは、生産者から消費者までのサプライチェーンのコストを低減させることにもつながる」と述べた。
オーストラリア農業資源経済局(ABARES)によると、国内青果産業の生産高(2023/24年度)は182億豪ドル(約1兆7,000億円)に達する見通しだが、そのおよそ半分の作物がフルーツ・フライの脅威にさらされているという。