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宿命のライバル、アサヒとキリンがオーストラリアで火花を散らす理由とは? ②オセアニア事業は日系2社のドル箱に

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アサヒは連結売上高の23%、キリンは同13%をオセアニアで稼ぐ

グラフ作成:©守屋太郎

「① ビール市場で日系2社が強い存在感」から続く

 暑く乾燥したオーストラリア。酒飲みには、灼熱の炎天下で喉を潤す、キリッと冷えたビールに勝るものはない。そんなオーストラリアのビール市場の規模は約4,600億円(2021/22年度=調査会社アイビスワールド推計)。アサヒとキリンは相次ぐM&A(合併・吸収)により、合計で9割近いシェアを寡占する。日本で天下を競ってきた宿命のライバルが、南半球に舞台を移して覇権を争っているのだ。

 その両雄にとって、グループ全体に占めるオーストラリア事業の重要性も、きわめて大きなものとなっている。ポートフォリオ(事業部門)の内容や分け方が異なるため単純に比較できないものの、いずれの決算の数字を見ても、オセアニア事業が本国・日本に次ぐ稼ぎ頭となっていることは間違いない。

 アサヒグループホールディングス(HD)の有価証券報告書によると、2022年度(22年1月〜12月)の連結売上高2兆5,111億円のうち、オセアニア事業は5,832億円(前期比16.6%増)と23.1%*1を占めた。主な事業部門別では日本(51.7%)に次ぐ2位となっている(上記グラフ右)。

 利益面での貢献度も大きい。同年度の営業利益2,170億円のうち、オセアニア事業の営業利益は802億円(28.2%増)と34.3%*2を占めた。中核の日本事業の営業利益964億円(19.4%減)と比較すると、オセアニアの稼ぐ力は大きい。

 一方、キリンHDの有価証券報告書によると、2022年度(22年1月〜12月)の連結売上高1兆9,895億円のうち、「オセアニア酒類」は2,559億円(18.3%増)と12.9%を占めた。事業部門別では、全体の3分の1を売り上げた「国内ビール・スピリッツ」(6,635億円=0.3%増)に次ぐ規模がある(上記グラフ左)。同社もオセアニアの利益貢献度は大きい。事業利益は315億円(18.8%増)と連結事業利益1,912億円の16.5%を稼いでいる。

 なお、2社は国別の数字を開示していないが、人口規模(オーストラリア約2,600万人、ニュージーランド約500万人)の差から、オーストラリア事業の数字がオセアニアの大部分を占めると見てよさそうだ。

「③成長性に富んだビール市場の魅力」へ続く

*1 部門別の売上収益構成比は、各部門の売上収益を、総売上収益から調整額計(81億1,000万円)を引いた値で割り、独自に算出したものです

*2 部門別の営業利益構成比は、各部門の営業利益を、総営業利益から調整額計(165億9,900万円)を引いた値で割り、独自に算出したものです

■ソース

第99期有価証券報告書(アサヒグループホールディングス株式会社)

第184期有価証券報告書(キリンホールディングス株式会社)





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