リベンジの連鎖が加速する犯罪組織同士の骨肉の争い
オーストラリア東部シドニーの裏社会で、報復のスパイラルが止まらない。一見平和な街の裏側では今、血を血で洗う「仁義なき戦い」が進行中だ。海外でも悪名高い「YAKUZA」の抗争さながらの復讐合戦が繰り広げられている。
直近の抗争激化の発端は、6月27日朝の出来事。仮釈放中の犯罪組織のボス、アレン・モラディアン受刑囚(48)は、東郊ボンダイ・ジャンクションにある自宅マンションの地下駐車場から車で出かけるところだった。だが、運転席に座った同受刑囚は、ヒットマンに至近距離から銃弾を浴びせられて絶命。ドラッグの闇取引で巨額の富を得た後、有罪判決を受けて服役した栄枯盛衰の人生に幕を閉じた。
以来、1カ月以内の短期間に、シドニー近郊では5件の銃撃事件が連続して発生している。7月23日に西郊グリーンエイカーで撃たれた男性(25)が27日に病院で死亡し、同じ日には西郊カンタベリーで20代の男性が射殺された。公共放送ABCによると、2人の死亡により、2020年8月以降の約3年間でシドニーでの抗争による犠牲者数は、合計22人(誤認によって射殺された1人を含めると23人)に達した。
捜査関係者がABCに述べたところによると、過去3年間の一連の抗争事件のすべてが直接、相互に関連しているとは限らないという。20年以降の初期は中東系ギャングのファミリー同士の骨肉の争いが中心だった。一方、過去1カ月間の連続射殺事件は、モラディアン受刑囚の暗殺に対する復讐がさらなる復讐を呼んでいるという。同受刑囚は「バイキー」(大型2輪車を乗り回すギャング)の有力な一派「コマンチェロ」との関連が疑われていた。
特別捜査本部が発足 州政府も全面支援
警察も黙ってはいない。地元ニューサウスウェールズ(NSW)州警察は27日、連続銃撃事件を捜査する特別対策本部「タスクフォース・マグナス」を立ち上げ、過熱する抗争の鎮圧に乗り出した。モラディアン受刑囚射殺以降の一連の事件について、州警察は「いずれも、主にシドニー南西部の違法薬物の供給に絡む抗争に関連がある」との見立てで捜査を進めている。
「州警察は制圧に失敗した」――。一連の抗争事件は、NSW州議会の野党からも批判を浴びるなど政治問題化している。同州労働党政権のヤスミン・カトリー警察・対テロ相は27日、「シドニー南西郊外と州全体の市民を守るため、引き続きあらゆる法的手段を講じる」と述べ、特別対策本部に最大限の支援を行う考えを表明した。
また、州警察のカレン・ウェブ警視総監は、特別捜査本部の役割について「犯罪者を突き止めるだけではなく、路上の無慈悲な暴力を撲滅するために、最大限の能力と武器を捜査員に提供する」と強調した。
過去には、関係のない一般市民が犯罪組織同士の銃撃戦に巻き込まれたケースもあるだけに、警察はその威信にかけて全力で取り締まる構えだ。
「②謎に包まれたオーストラリア犯罪組織」に続く
■ソース
Police say common thread linking Sydney’s gangland shootings is drugs(ABC News)