中国には「是々非々で対応」と政府
中国政府は5日、オーストラリア産大麦に課していた高関税を約3年ぶりに撤廃し、事実上の禁輸措置を解除した。オーストラリアは、主に家畜の餌やビール原料に使われる大麦の世界最大の輸出国。生産者にとっては良いニュースだ。
中国は2020年5月、反ダンピングを理由にオーストラリア産大麦に80.5%の関税をかけ、国内市場から締め出していた。オーストラリアのスコット・モリソン首相(当時)が同月、新型コロナウイルスの発生源をめぐる独立した調査を中国に要求したことに、強く反発したためだ。
中国は、大麦だけではなく石炭やワイン、イセエビなど8品目について、オーストラリアからの輸入を制限または禁止した。表向きの理由は、ダンピング防止や検疫上の問題としていたが、事実上の経済制裁だった。
22年5月に発足したオーストラリアの労働党政権は、禁輸措置の撤廃を求めて中国側と交渉。ペニー・ウォン外相が同年12月、オーストラリアの閣僚としては約3年ぶりに中国を訪問するなど、両国の外交関係に緊張緩和の兆しが見え始めた。中国は今年に入り、オーストラリア産石炭の輸入を部分的に再開。大麦についても、オーストラリア政府は4月、世界貿易機構(WTO)への提訴を期限付きで一時棚上げし、再開に向けた地ならしを進めていた。
ウォン外相とドン・ファレル貿易相、マレー・ワット農林水産相は共同声明で「中国とは協力できる部分では協力し、国益に反する部分では合意しないというのが、オーストラリア政府の基本姿勢。大麦の措置(禁輸解除)はこうしたアプローチを反映したものだ」と表明した。政府は、中国が引き続き高関税をかけているオーストラリア産ワインなど他の産品についても、規制解除を要求していく。
国連貿易統計によると、オーストラリア産大麦の中国向け輸出額はピーク時の2018年には10億5,400万米ドルと、大麦輸出額全体(13億9,400万米ドル)の76%を占めていた。しかし、20年以降の禁輸を背景にほぼゼロに落ち込んだ。
ただし、22年以降、戦争で大麦の主要輸出国であるウクライナで大幅な減産となり、穀物価格も高騰した。このため、22年のオーストラリア産大麦の輸出量はやや減少したものの、輸出額は全体で23億2,300万米ドルと前年比で15%増加した。中国の禁輸が続いていたにもかかわらず、金額ベースでは戦争で「漁夫の利」を得た格好となっている。
中国に替わって最大の輸出先となったのはサウジアラビア(9億6,000万米ドル)だ。これに2位日本(3億5,200万米ドル)、3位クウェート(1億5,400万米ドル)などが続いている。
■ソース
Resolution of barley dispute with China(Minister for Foreign Affairs, Senator the Hon Penny Wong)
United Nations Comtrade Database