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キャッシュレス社会の死角とは? オーストラリアで現金決済の割合13%まで低下

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スマホ払いの普及とコロナ禍が拍車

 スマホをなくしたり、ネットワークがダウンしたりするだけで何も買えない、何もできない――。オーストラリアではキャッシュレス化が加速する一方で、ネットやデジタル機器を使いこなせる人とできない人の格差「デジタル・デバイド」が広がるなど課題も浮かび上がっている。23日付の公共放送ABC(電子版)が伝えている。

 中央銀行・豪準備銀(RBA)のデータによると、国内のすべての決済に占める現金決済の割合は2022年にわずか13%と過去最低の水準まで低下した。スマホによる支払いが浸透し、コロナ禍がキャッシュレス化に拍車をかけたという。

 メルボルンのRMIT大学の研究機関「ブロックチェーン・イノベーション・ハブ」のクリス・バーグ博士はABCに「クレジットカードやデビットカード(の現物カードによる支払い)さえ、少し時代遅れになりつつあります」と指摘した。

 コロナ感染拡大後、オンラインショッピングが急速に普及し、現金決済は大幅に縮小。コロナ禍が終息した今も元に戻る兆しはない。RBAによると、対面販売で8割以上現金を使用するヘビーユーザーの割合は7%と2019年から半減した。

現金はいざという時に備えた安全資産

 ただ、キャッシュレス化は便利な反面、問題もあるという。

「政策立案者の多くは現金の終わりについて議論していますが、私たちはそれを切望してはならないでしょう。(キャッスレス化は)私たちが向かっている方向ではあるものの、公的な政策とするべきではありません。一定の人たちはまだ現金を必要としているからです」(バーグ博士)

 デジタル金融サービスを利用できない高齢者や遠隔地の住民、障がい者などは、キャッシュレス化の弊害を受けると同博士は主張する。割合は少ないものの、身分証明書を持たないために銀行口座を作ることができない層もいて、それらのデジタル弱者は現金がなくなれば生活に苦しむことになるという。

 災害時には、現金を持っているかどうかも生命線となる。ニューサウスウェールズ州北東部リズモアで22年に起きた大規模な洪水では、電子決済システムが破壊されたため、現金を持たない被災者は生存に欠かせない水や食料、燃料を購入できなくなった。システムダウンは数週間続き、地元の金融機関が現金を満載したATMをヘリで被災地に空輸し、かろうじて難を逃れたという。

 キャッシュレス化は、個人情報の流出などプライバシー保護の課題も露呈している。加えて、緊急時の安全資産としての現金の価値も見直されている。RBAによると国内では22年時点で、1,020億豪ドル相当の紙幣が約20億枚流通している。1人当たり約4,000豪ドルの現金を持っていることになる。

 マッコーリー大のクリス・バサントカマー講師はABCに「売買に使う現金の量は(コロナ禍以降)減り続けていますが、現金流通量はむしろ増えています。取引の手段ではなく、安全を保障するものとしてキャッシュを利用しているのです」と語った。

■ソース

Australia’s transition to a cashless society raises concerns about financial exclusion, privacy and safety(ABC News)

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