「政策金利引き上げはもうない。次は来年7〜9月期に利下げ」と有力エコノミスト
月々の住宅ローンの支払いから住宅の価格、スーパーアニュエーション(確定拠出年金)の株価や債券などの運用益、勤めている会社の業績、それに連動する給与に至るまで、オーストラリアに住む人のお金のやりくりに密接に関係している金利の動向。中央銀行の豪準備銀は、来週5日に開く月例の理事会で、インフレが沈静化する中で利上げを継続するのか、打ち止めするのか。オーストラリア経済の今後にとって、きわめて重要な判断を下す。
RBAは2022年5月以降12回にわたり、前例のない激しいペースで利上げを実施してきた。コロナ経済対策で0.10%と実質ゼロだった政策金利を6月までに4.10%と4ポイント引き上げた。その目的は言うまでもなく、1990年初頭以来約30年ぶりとなる急激なインフレを抑え込むことにあった。
コロナ禍からの経済再開や世界的なサプライチェーンの目詰まり、ロシアによるウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰を背景に、オーストラリアの消費者物価指数(CPI)は22年初頭から急上昇。22年10〜12月期には前年同期比7.8%に達した。ただ、今年1〜3月期7.0%、4〜6月期6.0%とインフレの頭打ち感は鮮明になっている。
物価上昇のピークアウトは、昨年来の激しい利上げがようやく効いてきた格好だ。ただ、利上げの劇薬は、オーストラリアの全世帯の約3分の1を占めるとされる住宅ローン返済者の生活に打撃を与え、個人消費を冷え込ませるなどオーストラリアの経済や国民生活に大きな副作用ももたらした。
このため、エコノミストや金融市場では、RBAがついに利上げの打ち止めを決断するとの見方が出ている。
オーストラリアの金融市場を代表するエコノミストとして知られるウェストパック銀のビル・エバンス氏は1日、顧客向けの短信リポートで「RBAが5日の会合で政策金利を据え置くことを確信している」と予測。来年7〜9月期まで金利を据え置いた後、最初の利下げ(0.25ポイント)に踏み切るとの展望を示した。