修正案で与野党合意 運用益で公営・賃貸住宅を建設
総額100億豪ドル(約9,400億円)の運用益で住宅問題の解消を図る「オーストラリア住宅未来ファンド」の設立法案が、今週中に連邦上院で可決、成立することが確実となった。与党労働党のアンソニー・アルバニージー首相が11日、明らかにした。
同法案は、アルバニージー政権が住宅政策の目玉に掲げてきたが、与党が過半数に満たない連邦上院で可決のめどが立っていなかった。上院で法案成立のカギを握る左派の野党グリーンズ(緑の党)が、家賃の凍結など急進的な要求を条件に、賛成を拒否していたためだ。しかし、グリーンズのアダム・バント党首はこの日、与党の妥協案を受け入れ、賛成に回ると表明。与党とグリーンズなどの賛成多数で成立する見通しとなった。
同ファンドは、資金を金融市場に投資して得る運用益を原資に、公営住宅や手頃な賃貸住宅を提供する仕組み。低所得者向け公営住宅の供給を増やすとともに、賃貸住宅の供給を加速してひっ迫している需給の緩和を目指す。ファンド設立後の最初の5年間で、3万戸の公営・賃貸住宅を新たに建設する計画だ。
グリーンズとの交渉を進めてきた与党は6月、公営住宅に20億豪ドルを追加投資すると表明していたが、グリーンズは反対の姿勢を崩していなかった。与党は家賃凍結を呑まなかったが、新たに10億豪ドルを公営住宅に投資するとの妥協案を提示し、グリーンズと合意に至った。
オーストラリアでは、勤労者が若いうちからローンで持ち家を購入し、資産形成してくことが一般的だった。しかし、近年は不動産高騰や生活費の上昇を背景に、一般的な低中所得者層にとって住宅購入が困難に。住宅の需要に対して供給が少ないため家賃も上昇していて、住宅難が社会問題となっていた。
連邦議会では、労働党と保守連合の2大政党のいずれも上院で過半数を握ることができない「ねじれ現象」が長年、常態化している。このため、急進的な政策を掲げる少数派のグリーンズが、重要法案の成立をめぐりキャスティングボートを握るケースが増えている。
■ソース
DELIVERING ON THE $10 BILLION HOUSING AUSTRALIA FUTURE FUND, Media Release(Prime Minister of Australia)
Housing Australia Future Fund set to pass parliament after deal with Greens(ABC News)