少なくとも500機がウクライナ軍に配備
無人のロボット兵器が戦うSF(空想科学小説)の恐怖が、現実の戦争で顕在化している。オーストラリアのメルボルンに拠点を置く軍事テクノロジー企業「サイパック」はこのほど、経済紙「オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー」(AFR)の雑誌「ボス」が選ぶ2023年の「最も革新的な企業賞」で最優秀賞を受賞した。受賞理由は、サイパックが開発・生産し、ウクライナ戦争で戦果を上げている段ボール製無人機「PPDS」のイノベーション(革新的技術)だ。
同社のデービッド・ビシーノ最高経営責任者(CEO)はAFR(9月27日付)に次のように述べ、諜報や偵察に資するソフトウェアに優位性があるとの考えを示した。
「(ウクライナへの)最初の納品以来、ユーザーからの声を反映して環境に応じた改良を実施してきました。ウクライナでは今、(戦地の)航空写真を撮影するためにドローンの需要が高まっています。そうしたニーズに対応するため、諜報、監視、偵察のモジュール(交換可能な部品ユニット)を開発しています」
PPDSは価格が1機3,500米ドル(約50万円)と兵器としては破格に安いが、機体や尾翼が段ボールでできているためレーダーに探知されにくい究極の量産型ステルス兵器だ。翼幅2メートル、重量2.5キロの機体は家具量販店イケアの商品のように縦76センチ、横51センチ、幅4.5センチのフラットパック(平箱包装)で大量、安価に輸出できる。航続距離は最大120キロ。時速60キロで巡航できる。
偵察任務や物資(最大3キロ)の輸送が主目的とされるが、弾薬の搭載も可能だ。オーストラリア政府の対ウクライナ軍事支援の一環で今年3月から1カ月当たり100機が輸出されており、これまでに少なくとも500機がウクライナに提供されている。
同機は既に実戦で手柄を上げているという。報道によると、同機は8月末にロシア西部クルスク州の空港への空爆に参加。この作戦ではロシア軍の戦闘機5機、地対空ミサイル発射機2機、ミサイル防衛システム1機などが破壊されたとされる。
■ソース
Cardboard drone maker used in Ukraine is Australia’s top innovator(Australian Financial Review)