今週14日土曜日に投票
オーストラリアの先住民「アボリジナルおよびトレス海峡島しょ民」の地位を憲法に明記する改憲案をめぐる国民投票が14日、全豪各地の投票所で行われる。9日付の非営利メディア「カンバセーション」がまとめた最新の世論調査結果によると、改憲反対の声が賛成を上回っていて、改憲案が否決される公算が高まっている。
調査会社「ニューズポール」が3日〜6日実施し、全国紙「オーストラリアン」が掲載した世論調査(有効サンプル数1,225人)によると、改憲案に反対と答えたのは58%、賛成は34%、「決めていない」が8%だった。反対56%、賛成36%だった2週間前の同じ調査と比べて反対が2ポイント上昇した。
日刊紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」などが掲載した「リゾルブ」の調査(9月22日〜10月4日実施=有効サンプル数4,728人)によると、反対56%、賛成44%だった。9月初旬の前回調査では反対57%、賛成43%となっていた。
「ロイ・モーガン」の調査(9月25日〜10月1日実施=有効サンプル数909人)によると、反対46%、賛成37%だった。
問われる侵略と迫害の歴史認識
改憲案では、オーストラリア憲法(8章128条)の末尾に、第9章「アボリジニおよびトレス海峡島しょ民の認識」を追加。第9章129条に、①先住民が「最初のオーストラリア人」(ファースト・ピープルズ・オブ・オーストラリア)であることを明記する、②先住民問題に関する意見を議会と連邦政府に反映させる機関「ボイス」(先住民の声)を新設する。
改憲案には、欧州人による先住民への侵略と迫害の歴史を事実上認める象徴的な意味合いがある。アルバニージー首相の中道左派・労働党政権が2022年5月の連邦選挙で公約の柱に掲げ、今年6月に国民投票で是非を問う法案を成立させていた。
改憲の発議は、与党・労働党のほか左派の野党「グリーンズ」(緑の党)などが賛成した。最大野党の中道右派・保守連合の最大勢力である自由党は、先住民が「最初のオーストラリア人である」との記述は支持するものの、ボイスの設置と改憲案自体には反対していた。
過去の改憲実現は44回中8回のみ
国民投票で改憲を実現するには、憲法の規定上、◇全国で賛成が過半数を上回ること、◇6州のうち4州で賛成が過半数を上回ること、の2つの条件を満たす必要がある。
オーストラリア選挙管理委員会(AEC)によると、1901年のオーストラリア連邦発足以降、これまでに改憲の国民投票は44回行われているが、改憲案が可決されたのはこのうち8回にとどまる。
オーストラリアで改憲の国民投票が実施されるのは1999年以来24年ぶり。前回は、英国王を国家元首とする現行の立憲君主制の廃止と共和制移行の是非が問われたが、反対多数で否決されている。以来、当時盛り上がった共和制移行論議はすっかり下火となっている。
■ソース
The Australian Constitution(Parliament of Australia)
Referendum 2023, The Constitution(Australian Electoral Commission)