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中国「オーストラリアいじめ」は大失敗!? 対中輸出額は経済制裁前からむしろ2割近く拡大

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商品価格高騰で追い風

 関係が冷却化していたオーストラリアと中国の首脳外交が再開する。前保守連合政権の厳しい対中姿勢に反発した中国は2020年、オーストラリアの一次産品8品目の輸入を停止または制限していた。それから約3年が経ったが、オーストラリア側の影響はかすり傷程度で済んでいる。

 オーストラリア外務省の貿易統計によると、22年のオーストラリア産のモノの対中輸出額は約1,800億豪ドル(約17兆円)と、減少するどころか、経済制裁前の19年と比較してむしろ約18%増加した。

 その背景には、モノの対中輸出額の半分以上を占めるオーストラリア産の鉄鉱石、次に多い天然ガスなどの主力商品の多くが、経済制裁の対象とならなかったことがある。コロナ禍後の経済再開やロシアによるウクライナ侵攻を背景に、資源・食糧の国際価格が高騰したことが追い風となり、輸出額は逆に中国向け、世界全体ともに伸びた。





大麦は世界最大の輸出国に

 制裁対象となった品目の中でも、特に大麦は中国以外への世界市場への販路拡大の成功例となった。ビール原料や家畜の餌などに使われる大麦は、小麦などとともにオーストラリア産穀物の主力輸出商品の1つ。19年は金額ベースで全体の6割近くが中国向けだった。

 制裁の影響で対中輸出がゼロになったにもかかわらず、価格高騰や国内での豊作、ウクライナ戦争の「漁夫の利」が好影響をもたらした。国連貿易統計によると、22年のオーストラリア産大麦の輸出額は約23億米ドルと19年の3倍以上に伸び、オーストラリアは世界最大の大麦輸出国に浮上した。

 一方、経済制裁で大きな打撃を受けたのは、対中依存度が高く他に代替輸出先が見つからなかったワインとイセエビのほぼ2品目に限られた。「オーストラリアいじめ」と揶揄された経済制裁は、中国側の思惑通りに機能しなかった。一連の中国との貿易摩擦が、オーストラリア経済に大打撃を与えるとの予想は杞憂に終わった格好だ。

 ただ、今後は不動産バブルの崩壊や若年層の高失業率などを背景に、中国の景気減速が本格化した場合、オーストラリアの主力商品である鉄鉱石やエネルギー輸出へのショックは、今回のワインやイセエビの比ではないだろう。1990年代以降、中国の高度経済成長の果実を享受したオーストラリアだが、中国経済の長期的な凋落が現実のものとなれば、いよいよ影響から逃れることはできないかもしれない。

■ソース

Trade statistical pivot tables(Department of Foreign Affairs and Trade, Australian Government)

UN Comtrade Database(Department of Economic and Social Affairs, United Nations)





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