キーティング元首相は同調せず
現時点で存命しているオーストラリア連邦首相経験者7人のうち6人が30日、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配する武装勢力ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃を糾弾する共同声明を発表した。保守連合(自由党、国民党)と労働党の2大政党の元首相が、超党派で政治的なメッセージを発信するのは異例。イスラエルの地にユダヤ国家を建設する運動「シオニズム」を掲げるユダヤ系団体「オーストラリア・シオニスト連盟」の呼びかけに応じた。
声明文に連名で署名したのは、ジョン・ハワード氏(自由党=首相在任期間:1996年〜2007年)、ケビン・ラッド氏(労働党=07年〜10年、13年、現駐米オーストラリア大使)、ジュリア・ギラード氏(労働党=10年〜13年)、トニー・アボット氏(自由党=13年〜15年)、マルコム・ターンブル氏(自由党=15年〜18年)、スコット・モリソン氏(自由党=18年〜22年、現職連邦下院議員)の6人。なお、無神論者であることを公表しているギラード氏を除く5人はキリスト教徒とされる。
6人は「我が国に人種的、宗教的ヘイトの余地はない。反セミティズム(反ユダヤ主義)ほど凶悪な人種的憎悪はない」とユダヤ人社会との連帯を強調した上で、「ハマスのテロリストは数千発のロケット弾を発射し、イスラエルに侵攻して1,400人の若者、老人、女性、男性、子ども、赤ちゃんを殺害、誘拐した。ホロコースト以来最大のユダヤ人に対する虐殺であり、そのグロテスクな残忍性と暴力はISIS(自称「イスラム国」)に匹敵するものだ」と述べ、7日のハマスによるテロ攻撃を強く非難し、人質の無条件解放を要求した。
一方、激しさを増すイスラエル軍によるガザへの攻撃については、イスラエルに戦略的な助言を行う立場にないと断った上で「ハマスを打倒するという合法的な目標は、ガザの民間人の支援と保護と同時に達成されなければならない。人道的見地と軍事的な技量によって、民間人の犠牲を回避するよう求める」とイスラエルに注文を付けた。
また、6人は「多くの子どもたちを含む罪のない数千人のパレスチナ人が死傷していることにショックを受けている」と語り、ガザ住民への人道支援と物資の供給を呼びかけた。
オーストラリア政府は、イスラエルとパレスチナの双方を国家として承認する案を支持する立場。6人は「2国家の共存は、イスラエルとパレスチナの長期的な平和の土台となる解決策だ」と訴えた。
一方、ポール・キーティング氏(労働党=91年〜96年)は存命中の元首相の中で唯一、声明に賛同しなかった。キーティング氏は現労働党政権の外交政策に批判的な発言を繰り返しており、党執行部と距離を置いている。
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