北部準州の鉱山が操業中断
オーストラリアの新興鉱業企業「コア・リチウム」が5日、北部準州にある同社唯一のリチウム鉱山の操業を一時的に中止すると正式発表した。リチウム価格の急落を理由に操業中断を決めた同社のギャレス・マンダーソン最高経営責任者(CEO)は声明で「採掘作業の中止は難しい決定が、在庫の鉱石を継続して精製することで引き続き売上を生み出し、キャッシュフローの慎重な管理に注力していく」と述べた。コストを抑制しながら同社の保有する権益と企業価値を温存し、市況が上向けば生産再開と新規鉱山の開発を進める方針だ。
米地質調査所(USGS)の21年の統計によると、オーストラリアは世界最大のリチウム生産国。現時点で確認されている資源量もチリに次いで2番目に多い。リチウム資源はオーストラリア、チリ、中国、アルゼンチンに偏っている。
リチウムの抽出方法は2通りある。オーストラリア産は鉱床から鉱石を採掘して精製する一方、チリ産やアルゼンチン産は塩湖の水分を蒸発させて取り出す。
リチウムは世界的なEVの普及を背景に需要が高まっている。豪州でも近年、次々とプロジェクトが立ち上がり、電池や自動車の大手外資による争奪戦も起きている。ただ、資源は偏在しているものの、決して珍しい金属ではない。18〜19年には、需要に対して供給が増えすぎて暴落した経緯がある。
今回の局面でもEV需要の拡大を見越した投資と生産がダブつき、需給バランスが崩れて価格が急落した形だ。最大のEV市場である中国の景気減速も影を落としている。リチウムは、中長期的にはEVや蓄電池の普及で需要は拡大していくと予測されるものの、鉱業企業や投資家にとってはボラティリティー(価格変動)の激しさが不安材料となっている。
■ソース
CXO:ASX Announcement, Strategic Review Update(Core Lithium)