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広いオーストラリアで住宅不足のなぜ? 5年で120万戸建設の政府目標、達成は難しそう

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7-9月期の新規住宅着工件数、前年同期比17%減

(Photo: Nicolas Gonzalez on Unsplash)

 オーストラリアは日本の約20倍の面積に対して人口が約2,600万人と少ないが、国土の大半が居住に適さない乾燥した荒野となっている。このため、貴重な水資源に恵まれ、インフラが整った狭い都市部に人口が集中し、住宅の供給不足と価格高騰が慢性化。そこにロックダウン(都市封鎖)解除で一気に移民が増えて需要が急拡大した一方、利上げやインフレの影響で着工が冷え込んで供給が絞られたことから、住宅難に拍車がかかっている。

 オーストラリア統計局(ABS)は17日、住宅建設統計を発表した。同統計は景気や住宅市場の需給バランスを見る上で重要な指標の1つだ。これによると、2023年第3四半期(7月〜9月)の民間部門の住宅着工件数(季節調整済み)は3万7,116件と前年同期比で17.4%減、前期比で10.4%減と大幅に落ち込んだ。

 内訳は、戸建てが2万2,741件(前年同期比21.9%減、前期比9.7%減)、その他(テラスハウスやマンションなど)が1万3,485件(前年同期比9.6%減、前期比11.2%減)だった。

「24年の着工は18万件以下」と専門家

 オーストラリア住宅産業協会(HIA)の上級エコノミスト、トム・デビット氏によると、戸建ての着工件数の減少幅は過去10年以上で最大だった。デビット氏は声明で「23年9月までの1年間に着工した戸建ての数は10万3,707件と前年同期比で17.0%減った。住宅を120万件建設しようという政府の取り組みはスロースタートとなった」と指摘した。

 連邦政府は住宅不足を解消するため、2024年半ば以降の5年間で120万軒を新たに建設する目標を掲げている。

 しかし、中央銀行の豪準備銀(RBA)が22年5月に政策金利の引き上げを開始して以来、住宅ローン金利の上昇により住宅購入者の借り入れ能力が低下した。折からのインフレで住宅建設コストも上昇。銀行が融資から撤退し、建設プロジェクトのキャンセルも相次いだ。

 同氏は、今年も新規建設の動きは低調に推移すると見ており、「24年の着工件数は戸建てと集合住宅の合計で年18万件以下となり、政府目標の達成に必要な年24万件を大幅に下回るだろう」と予測している。

■ソース

Building Activity, Australia(Australian Bureau of Statistics)

Australia is not commencing enough housing to meet 1.2 million target(Housing Industry Association)





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