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オーストラリアで雇用が急速に悪化している!? 12月の就業者数減少幅は過去30年で最大に

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それでも失業率は3.9%と変わらず 歴史的低水準のなぜ?

 インフレと利上げによる生活コスト高騰を背景に消費が冷え込み、景気がゆっくりと下り坂に向かう2024年のオーストラリア。直近の就業者数はコロナ禍を除くと実に30年ぶりの減少幅を記録し、雇用情勢の悪化が加速しているように見える。だが、失業率は依然として3%台の歴史的低水準を維持している。なぜなのか?

 オーストラリア統計局(ABS)が18日発表した雇用統計によると、2023年12月の就業者数(季節調整済み)は1,420万1,100人と前月比で6万5,100人減少した。失業者数は57万3,600人と同800人減少した。失業率は3.9%と前月と変わらなかった。

 公共放送ABC(電子版)によると、就業者数の減少幅は、主要都市のロックダウン(都市封鎖)で激減した21年9月以降で最大だった。コロナ禍の特殊要因を除けば、1993年2月以来約30年ぶりの落ち込みとなった。

 フルタイム就業者は10万6,600人減少した一方、パートタイム就業者は4万1,400人増加した。企業が景気悪化に備え、正社員を減らしてアルバイトを増やしている可能性がある。

求職者が増えなければ失業率は上昇しない

 こうしたデータは、雇用情勢が急激に悪化する前触れなのかと言えば、そうでもなさそうだ。統計上のからくりがある。

 求人サイト大手「インディード」のエコノミスト、カラム・ピカリング氏はX(旧ツイッター)に「就業者数が6万5,100人も減ったのに失業率が下落しなかった主な理由は、労働参加率(労働力人口に占める就業者と失業者=仕事を探している人=の割合)が0.4ポイントも急落したことにある。コロナ禍を除けば、労働参加率の減少幅は01年4月以来最大だった」と指摘した。

 解雇や自主的に退職しても、十分に生活資金があったりリタイアしたりした場合、求職活動を行わなければ失業者とみなされない。つまり、就業者数が減っても失業者(仕事を探している人)が増えなければ、失業率(労働力人口に占める失業者の割合)は統計上、上昇しないのだ。

「年末までに失業率4.5%」との見方も

 また、就業者数が大幅に増加した10月と11月の反動で、12月の季節調整値が統計上、実態よりも落ち込んだと見られる。

 ABSの雇用統計部門のトップを務めるデービッド・テイラー氏は声明で「12月の就業者数の減少幅は大きかったものの、(10月と11月の増加幅が大きかったために)9月と比較するとまだ5万2,000人多い状態にある。過去1年間で見ると、季節調整済みの就業者数は1カ月当たり平均3万2,000人増えており、23年を通して雇用は力強く拡大したことを示している」と述べた。

 失業率が依然として低水準にある一方、労働参加率が高水準を維持していることから「労働市場は引き続きタイト(需給がひっ迫している)状態にある」(同氏)という。

 一方、ネガティブな意見も聞かれる。経済コンサルタント会社「オックスフォード・エコノミクス・オーストラリア」のアナリスト、ベン・アディ氏はABCに「失業率に変化はなかったものの、雇用が急減し、労働市場が軟化していることに疑いの余地はない」と断言した。その上で同氏は「軟化は24年を通して継続すると予測しており、失業率は年末までに4.5%に上昇するだろう」との見通しを示した。

■ソース

Unemployment rate remains at 3.9% in December(Australian Bureau of Statistics)

Unemployment rate stays steady despite the biggest monthly loss of jobs outside of COVID since 1993(ABC News)





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