山火事禍のハワイ旅行、秘密裏の閣僚兼務問題で汚点 16年間の政治生活に終止符
オーストラリアのスコット・モリソン前首相(最大野党・自由党)が23日、政界引退を表明した。2月末までに連邦下院議員を辞職する。首相在任中は「スコーモー」の愛称で親しまれ、原潜導入を柱とした米英豪の安保枠組み「オーカス」(AUKUS)の立ち上げや、コロナ禍の敏速な経済対策などで実績を挙げた。ただ、山火事災害中のハワイ休暇や、コロナ禍の閣僚兼務問題で汚点を残した。
モリソン氏は議員辞職の理由について、自身のフェイスブックページで「16年以上クック選挙区(シドニー南部)の下院議員を務めてきたが、2月末で議会を去ることを決断した。グローバル企業で新たしい職務にチャレンジするとともに、家族とより多くの時間を過ごしたい」と述べた。
公共放送ABC(電子版)が関係者の話として伝えたところによると、新しい仕事は米国が拠点となるという。オーストラリアの首相経験者は、比較的早めに引退した後、民間で要職を務めるケースが少なくない。モリソン氏もビジネスの世界で第2の人生をスタートさせる。
モリソン氏は1968年シドニー生まれの55歳。ニューサウスウェールズ州大学卒。オーストラリア政府観光局のトップなどを経て、中道保守の自由党から07年の連邦選挙に出馬して初当選。2013年に6年ぶりに保守連合(自由党・国民党)政権を奪回したトニー・アボット首相の下で移住・国境保護相、社会サービス相、マルコム・ターンブル政権で財務相、18年8月から4年弱、首相を務めた。
山火事が猛威を振るった19年12月にハワイで休暇を過ごしていたことが明らかになり、批判された。その後支持率が低迷し、22年5月の連邦選挙では中道左派の労働党に9年ぶりの政権交代を許した。
下野後も野党の陣笠議員を続けていたが、新型コロナウイルスの感染が拡大した20年に首相権限を集中させるため、秘密裏に複数の閣僚を兼務していたことが22年に発覚。緊急時とはいえ、民主主義を揺るがしかねない行動だったとして批判の集中砲火を浴びた。同年11月には、連邦下院がモリソン氏に対する非難決議を可決していた。
モリソン氏の議員辞職に伴い、シドニー南部クック選挙区では補欠選挙が行われる。同選挙区は伝統的に保守の地盤が強く、自由党新人の当選はほぼ確実と見られる。ABCによると、地元サザーランド郡の現役首長など自由党候補2人の出馬が取り沙汰されているという。
■ソース
Former prime minister Scott Morrison set to quit politics at end of February(ABC News)