前年同期比4.1%上昇 政策金利引き下げ、年内2回織り込む
オーストラリアのインフレ鈍化が改めて確認され、金融市場では中央銀行・豪準備銀(RBA)による早期利下げに期待が高まっている。オーストラリア統計局(ABS)が31日発表した四半期の消費者物価指数(CPI)統計よると、2023年10-12月期のCPIは前年同期比で4.1%上昇し、21年1-3月期以降で最も低い水準となった。前期比では0.6%の上昇だった。いずれも市場予測の前年同期比4.3%、前期比0.8%を下回った。
RBAがより重視するCPIの「トリム平均値」も前年同期比4.2%と前期(5.1%)から0.9ポイント低下。22年10-12月期の6.8%をピークに4期連続で下落した。ABSが同日発表した月次CPI指標(四半期統計と比べてサンプル数が少ないなど変動が大きいため「参考値」とされる)でも、12月のCPI上昇率は前年同月比3.4%と11月の4.3%から大幅に低下した。
利下げの時期と幅が最大の焦点に
インフレの上振れリスクが沈静化していることから、RBAは2月5〜6日に開く24年最初の会合で、政策金利を現行の4.35%で据え置く可能性が高い。市場では、利上げは打ち止めとなり、次の一手は利下げになるとの認識がさらに強固なものとなっている。
市場は、RBAが年内に0.25ポイントの利下げを少なくとも2回行うことを織り込んでいる。ロイター通信は、金利先物価格から「RBAが5月に最初の利下げを行う可能性が高まり、8月の0.25ポイント利下げも織り込まれた。24年中の利下げ幅は(CPI統計発表前の)0.42ポイントから0.52ポイントに上昇した」と報じた。
財務相は減税策の必要性強調
ただ、CPI上昇率は依然としてRBAのインフレ目標とする「2〜3%」より大幅に高い水準にある。CPI統計の発表を受けて、ジム・チャーマーズ連邦財務相は会見で「インフレとの戦いにおいて、歓迎すべき、励みとなる進展があったが、依然として生活コスト高騰の圧力を和らげる必要があり、だからこそ減税が非常に重要なのだ」と述べ、労働党政権が1月25日に発表した個人所得税減税第3弾の見直しの必要性を改めて強調した。
政権は7月1日からの施行が決まっている所得減税を手直しし、中間層への減税を強化する法改正を目指している。ただ、中銀による利下げが予測されるタイミングに政府が減税を実施すれば、緩和が効きすぎてインフレ再燃のリスクとなる可能性も否定できない。
オーストラリアでは2022年末にかけて、ロックダウン(都市封鎖)からの経済再開やサプライチェーンの目詰まり、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で、激しいインフレに見舞われた。CPI上昇率は22年10-12月期に前年同期比7.8%と約30年ぶりの歴史的高水準でピークを打った。23年に入ると1-3月期7.0%、4-6月期6.0%、7-9月期5.4%と低下。RBAが22年5月以降に実施した激しい利上げが功を奏した形となっていた。
■ソース
CPI rose 0.6 per cent in the December 2023 quarter(Australian Bureau of Statistics)
Australia Q4 inflation slows sharply to two-year low, bringing rate cuts nearer(Reuters)
Press conference, CPO, Melbourne(The Hon Dr Jim Chalmers, MP, Treasurer)