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裁判での反対尋問/法律相談室

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第74回 日豪プレス法律相談室
裁判での反対尋問

 反対尋問は、相手方が申請した証人に対して行うものです。弁護士の反対尋問の技術、つまり何を聞くかで進行がガラリと変わることがあります。有効な反対尋問ができれば、相手側の証人から新事実を引き出せるかもしれません。

2つの重要ルール

 期待する答えが返ってくるような誘導尋問を行います。一方で、主尋問での誘導尋問は禁止されています。また、証人は自由回答式質問においてのみ、自由に話すことが認められています。絶対にイライラしたり、失礼な態度を取ったり、脅したりしてはいけません。

2つの助言

◎簡潔に:1つの質問で済むのに10の質問をしてはいけません。

◎証拠を使いこなす:かつて、相手弁護士が反対尋問中にミスを犯したことがあります。私の証人は日本人だったので日本語の証拠書類を準備しましたが、日本語原本と英訳版とではページ数が異なっていたため、英訳版のみ参照していた相手弁護士は証人を混乱させるだけの尋問を行っていました。最悪なのは、それによって判事の気も削がれてしまったことです。この時、私は証人の陳述書を日本語で準備し、実際に証人が使用した言葉、説明文をそのまま陳述書に反映させていました。豪州の裁判所で日本語の陳述書が使用されたわけですが、それは強固な証拠となり、案件を勝訴に導くことに貢献しました。こうした実体験から、証人・証拠準備の重要性を身を持って痛感しました。

 もし読者の皆さんが、裁判に証人として呼ばれた場合、弁護士による尋問に回答する際には、以下に気を付けましょう。

「正直に答えましょう」

「実際に聞かれた質問にのみ回答しましょう」

「情報を任意提供してはいけません「落ち着いて答えましょう」

 最後に豪州トップ法廷弁護士の1人であるTom Hughes QCの反対尋問に関するエピソードを紹介します。ラグビー・リーグのレジェンド、Andrew Ettingshausen氏のヌード写真を掲載し、名誉棄損で訴えられた雑誌編集者が主尋問に対し、「シャワー中のぼやけた写真なので選手のプライベート部分は見えなかった」と説明したのに対し、Hughes QCが行った反対尋問は、「じゃあ他に何が見えるのかな……アヒル(DUCK)かい?」でした。

このコラムの著者

ミッチェル・クラーク

ミッチェル・クラーク

MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として25年以上の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。豪州法に関する日本企業のリーガル・アドバイザーも務める。高等裁判所での勝訴経験があるなど、多くの日本人案件をサポート。

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