日本ラグビー界では現在、オーストラリア、ニュージーランドなど世界の強豪チームでの代表経験を持つ選手が多数プレーしており、日本のレベル・アップにひと役買っている。そこで、かつて豪州で活躍し、現在は日本に舞台を移した元ワラビーズの選手たちについて日本からリポートする。 文=山田美千子/写真=山田武
ラグビーが帰ってきた
ワールド・カップの関係で日本国内のトップ・リーグ2020シーズンは、1月から5月までの変則開催となっている。今シーズンは、ワールド・カップでラグビーの魅力を知った新たなファンがスタジアムに押し寄せている。
優勝した南アフリカ、ニュージーランド、そして、オーストラリアからも、WTBサム・ケレビ選手、FHバーナード・フォーリー選手、FLデイヴィッド・ポーコック選手らがトップ・リーグで、ハイ・レベルなプレーを見せている。彼らだけでなく、ダン・カーター選手(NZ)やマット・ギタウ選手(豪)など引き続き日本でプレーしている選手もおり、今季のトップ・リーグでは、これまで以上に魅力的な選手のプレーを堪能することができて、楽しみも倍増だ。
一方、スーパー・ラグビーも開幕した。最後のシーズンとなるサンウルブズ。トレーニング・スコッドも含めると、日本、NZ、南アフリカ、オーストラリア、ジョージア、トンガ、フィジー、台湾出身の選手から構成された多国籍チームだ。元ワラビーズ(キャップ2)のジェイク・シャッツ選手をはじめ、オーストラリアからのスコッドが増えている。オーストラリア・ラグビー界のレジェンド、ティム・ホラン氏を父に持つアレックス・ホラン選手、テクニカル・ディレクターとして元ワラビーズ・コーチのネイサン・グレイ氏も名を連ねている。
2月1日、福岡県レベル・ファイブ・スタジアムでのレベルズ戦で初戦を迎えた。レベルズには、昨年のRWCを経験したワラビーズが5人、対するサンウルブズではHOジャバ・ブレグバゼ選手(ジョージア代表)のみ。トップ・リーグ開催時期と重なってしまったため、昨季までのように日本代表選手のスコッドはない。さらにチーム結成から4週間ほどしか経っておらず、チームとしての経験値、コミュニケーションの面からも不利かと思われていた。が、しかし終わってみれば、36-27でサンウルヴズが開幕戦初勝利、レベルズ戦初勝利を飾った。FW陣のプレーが光った。半面、レベルズの不甲斐なさが目立った試合でもあった。
千葉県市原市で行われているトレーニングを取材した日、練習前に「ファン・ミーティング」が行われた。ジャパンSR渡瀬裕司CEOが「サンウルブズはいろいろな国の選手が一緒になってやっています。これからの世の中、ラグビーだけではなく、社会もそうなっていくでしょう。英語を勉強して、ラグビーをしっかりやって、こういう選手になれるように頑張れ」とラグビー・スクールの子どもたちに語りかけていた。この言葉を忘れずに、子どもたちには代表選手を目指してもらいたいものだ。
トレーニングが始まると選手たちは輝きを増していた。自主性を重んじた自由な雰囲気ではあったが、選手個々の能力は高く、意識も高いように見えた。その中で一際目を惹いたのが、Oのマイケル・ストーバーグ選手だ。U20オーストラリア代表にも選出され、16年からは近鉄でプレーをしているという。FW陣を引っ張っていく存在になるのではないだろうか。
トップ・リーグとサンウルブズ。どちらも多くのオーストラリア出身選手がプレーする。彼らの活躍を楽しみにしたい。