保険
Q
以前、本コラムでも環境汚染向けの保険についての話がありましたが、現在私が勤める会社で土地の買収とそこでの事業拡大計画を検討しています。近年、同保険に関して何かしらの状況変更などがあれば教えてください。(37歳男性=商社勤務)
A
環境汚染に対する保険の注目度は年々高まっています。特に昨今はいかなる業種、外的要因や内的要因であれ、以下のような一般的な環境リスクは見逃せない要素の1つとなっています。
- 一般的な危険物や有害物質に限らない自社製造物の環境への流失、漏洩(ろうえい)
- 大気、土壌、地盤への汚染(アスベスト含む)
- 大雨などの気象現象に伴う汚染物の流失
- 火災に伴う消火活動による汚染
過去の事例において、最も一般的な環境事故の原因は自然災害や機械類の故障、従業員の人的ミスなどですが、自然災害や火災などによる罹災(りさい)に伴い、建物自体への損害や悪意ある他者による不法侵入や破壊行為などがきっかけとなることもあります。
そうした状況を踏まえて、相談者の事業における環境リスクの多寡を検討するには、以下のような点を踏まえて考えるのが良いでしょう。
- 環境上・法律上の許可やライセンスが必要か
- パイプラインや貯蔵タンクを有しているか
- 工業用地や危険な施設の近くで操業をしているか
- 化学品や燃料などを取り扱っているか
- 廃棄物処理、焼却処理、リサイクル、回収などに携わっているか
- 建物の築年数が30年以上か
前述の通り、たとえ上記の状況ではない場合でも環境汚染に関わる恐れはあります。例えば、自社占有地の前のオーナーが原因の汚染であっても、ケースにより現占有者が洗浄の責任を負う場合もあり、またはオーナーとして所有している建物におけるテナントが原因の汚染でも、場合によりオーナー側が責任を負うこともあり、製造業、建設業、廃棄物処理業、電気やガスなどのユーティリティー関連、医療関係、教育関係から街のクリーニング屋に至るまで、いかなる業態でも環境リスクに直面する恐れが大いに考えられます。
それを踏まえ保険を検討する場合、一般的な環境リスク保険では当然ながら行政による洗浄強制を始め、第三者からの損害賠償請求、ひいては第三者の介入のない自前でのコストをも包括してアレンジするのが肝要で、以下は一般的な補償内容です。
この種の保険は、保険料も高額になることを踏まえて、各事業会社に最適な補償内容の設定が不可欠なので、専門業者に相談することをお勧めします。
- サイトの修復コスト
- 徐々に広がった汚染及び突発的な汚染の洗浄費用
- 対物・対人の賠償責任補償
- 抗弁費用
- 緊急対応費用
- 事業中断による逸失利益補償
- 天然資源への損害の補填費用
この種の保険は、保険料も高額になることを踏まえて、各事業会社に最適な補償内容の設定が不可欠なので、専門業者に相談することをお勧めします。
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斉藤 大(さいとう だい)
エーオン・リスク・サービス・オーストラリア
ジャパン保険サービス部
世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日系企業顧客の法人・個人保険アレンジ、事故処理などを担当