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給料未払いのまま会社が倒産。連絡もとれない場合はどうすれば?

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法律

Q

先日、勤めていた会社が倒産したとの通知を突然受けました。先月と今月の給料がまだ支払われておらず、有給休暇も残っています。雇用主に連絡したのですが、電話がつながりません。こういった場合、一体どのようにしたら良いのでしょうか。(40代男性=会社員)

A

会社が倒産した場合、清算人(Liquidator)が任命され、会社が負債を負っている債権者に対して順番に支払いをします。もし従業員に未払いの給料や有給がある場合、従業員は会社に対する「債権者の1人」となるので、清算人を通して未払い額を清算してもらうのが通常です。

しかし、もし会社に十分な支払い資産が残っていない場合、残念ながら従業員の未払い給与や未取得有給休暇の補償が支払われる保証はありません。よって、オーストラリア連邦政府はそのような状況に備え「Fair Entitlements Guarantee Act 2012」によるセーフティー・ネットを準備しています。

「Fair Entitlements Guarantee Scheme」(以下、FEG)による補償の対象となれば、失職者は最大13週間の未払い給与、未取得有給休暇、長期勤続休暇、最大5週間の解雇通知に代わる補償、そして最大4週間の余剰人員解雇補償を受けることが可能です(スーパー・アニュエーションは補償外)。

しかし、FEGを通じた補償を受けるには幾つかの条件を満たすことが必要です。まず、FEGの対象条件として、オーストラリア市民、永住権保持者、または失職時に労働許可が与えられていたスペシャル・カテゴリー・ビザ(サブクラス444)保持者であったことの証明が挙げられます。そして、勤めていた会社の倒産により失職したこと、また会社からの未払いが証明できる人に限ります。それと同時に、勤めていた会社には既に清算人が任命されていることが条件となります。

しかし、上記条件を満たしていても対象外となる場合があります。例えば、雇用契約がプロジェクト・ベースの契約者(Contractor)であったり、会社の役員(Director)である場合、または会社役員の家族はFEGの受給資格を満たさないので、ご注意ください。

FEG申請が出来る期間は失職後12カ月以内、または会社に清算人が任命された日から12カ月以内に行わなくてはなりません。実際に支給される補償額の計算には、通常清算人から提出される会社の財務諸表や会計記録が使われますが、留意すべき点は、FEGには上限があるということです。2019年5月現在FEGが支払う補償額は「週給2,451ドルまで」と定められており、例えそれ以上給与があったと証明できてもFEGがその差額を補償することはありません。

そしてFEG申請者には提出すべき証拠書類が幾つかあります。まずはオーストラリア国籍や永住権、失職時に就労可能のビザなどのFEG受給資格を証明する書類です。更に雇用契約書、給与明細書、銀行明細書、Employment Separation Certificateや解雇通知書なども参考資料となります。会社が倒産するという「もしもの事態」に備えて、自身の雇用記録を日頃から保管しておくことが大事なのは言うまでもありません。

※本記事は、法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せ頂いたご相談は、紙面に掲載させて頂く場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


山本 智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys

1998年NSW大学卒業(法学士・教養学士)。同年弁護士資格取得。1998年より数々の法律事務所での経験を重ねた後、「Yamamoto Attorneys」を設立、現在に至る

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